悪戯と破壊


 あぁ、正解は、悪戯小僧御用達。『接着剤』だとも!

 接着剤程度で止まる訳が無い?そんな事は無い!ファンデルワールス力とは意外にも強い力を持っていて、条件次第では人間を牽引する事さえ簡単に出来る科学の産物だ。

 そんな代物を、例えば、シェリー君に夢中になっているゴーレムの足の関節部分にたっぷり捻じ込めばどうなると思うかね?

 これが単純に手足表面であれば、あっという間に力技で引き剥がされたかもしれないが、関節部分を固めるとあれば話は別。関節は力技で引き剥がす云々が出来る様な部位では無い。単純な装置が足の関節を固められ、実際は動かない関節を、動く事前提で動かして歩こうと動き出せば、どうなるか?

 答えは簡単。愉快や愉快、相手は跪く事になる。

 そう、目の前のこの巨大な石塊の様に。



 ゴゴ……ギギ………ゴゴゴゴゴゴゴ………………。

 人間であれば片足を失い、例え足の関節が動かなくとも、怨敵に這いつくばってでも喰らい付こうと足掻く…………という執念が期待できるのだが、残念ながらそこまでの知能や人間性をこの人形は有していない。

 まぁ、石塊であれ肉塊であれ、這いつくばって足掻いた所で、私には決して喰らい付く事など出来はしないがね。


 ゴゴ………ゴゴゴゴ……………ゴゴゴゴ……………………


 動きは止めた。しかし、関節を固められてそう簡単に動けないとはいえ、このまま放置すれば千日手……どころか接着剤を万が一如何にかされて再度動き出せば、こちらがまたしても不利になる。

 如何するか?決まっている。シェリー君が最初に打っていた手の真価を発揮させる。

 シェリー君がこの石塊を足止めしたのは、何もこのまま『物理で殴って削り取ろう等と乱暴な考えをしているから』では断じて無い。

そんな狂戦士バーサーカー的発想、何処の誰が考えて、挙句実行するのかね?

 いや、そんな事は如何でも良い。

 問題は、シェリー君が今、条件を揃えてという事に有る。

 真っ当に表面から削って行けばエネルギー消費は甚大。ここで勝っても次で負ける。

 だからシェリー君は真っ当でない方法で破壊する事に決めた。

 シェリー君は地面に跪く石人形の周囲を回り込み、時に石人形の背中に乗り、その表面を到底石を砕けない様な力で軽く叩き、注意深く観察していた。

 それを見ていた5人は狐につままれた様な顔だ。

 なにせシェリー君はこの作戦を『巨大ゴーレムの破壊が目的』と言っていたのだから。皆大量破壊兵器よろしくとんでもない大爆発や轟炎や、さもなくばとんでもない破壊力の打撃でも期待していたのだろう。

 それは的外れだ。

 くどい様だがこの巨体を純粋な力で真正面から破壊し尽くすのは骨が折れる。

 が、シェリー君はゴーレムが組み上がる前から破壊の為の方法を考え、既に破壊の下準備を実行していた。

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