巨大な障壁


 『水塊』

 6人が広間へと足を踏み入れた途端にそこら中の壁が動き始めた。

動き始めた……というよりは剥がれて蠢き始めた。

 広間の石の模様が同じであれば違和感は無いが、ここまで変わっていれば何か有ると思わざるを得ない。

 ここまでだとこの場所の壁がゴーレムになるという事だけが解る。が、今回は少し違う。

 広間のサイズが凄まじく大きい。

 そして、その巨大な壁や天井全てに怪しさ満載なゴーレムの部品と思しき細工。

 物量にモノを言わせた戦術?大広間で似た様な事をしていただろうに。何よりそこらの石を部品としてゴーレムを大量に作るなら、明らかに不要な部品が見られる。加えて天井をここまで高くする意味が無い。それに、ただの物量戦術なら、何故通路に居る内に逃げ場と機動力の無い我々を叩かなかった?人間ならまだしも、命無き石人形なら数で押して圧殺出来る。

 何故それをやらなかったかと言えば、それは目の前の光景が全てを物語っている。

 石の群衆が纏まり、形を作っていく。


ゴ・ゴ・ゴ・ゴ・ゴ・ゴ・ゴ・ゴ・ゴ・ゴ・ゴ・ゴ・ゴ・ゴ・ゴ・ゴ・ゴ・ゴ・ゴ・ゴ・ゴ・ゴ・ゴ・ゴ・ゴ・ゴ・ゴ・ゴ・ゴ・ゴ・ゴ・ゴ・ゴ・ゴ・ゴ・ゴ・ゴ・ゴ・ゴ・ゴ・ゴ・ゴ・ゴ・ゴ・ゴ・ゴ・ゴ・ゴ・ゴ・ゴ・ゴ・ゴ・ゴ・ゴ・ゴ・ゴ・ゴ・ゴ・ゴ・ゴ・ゴ・ゴ……………………。

 石の巨人が重いその躯体を動かし始めた。

 「………………でっかいナァ。」

 「初めっから聞いていたから覚悟はしてたけど、このデカさは………………ビビるにー………………。」

 「ヌゥ…………………………凄い!」

 「ねぇねぇねぇ、これ。不味くない?」

 「これを、倒せるのかのー?」

 5人共動揺が見て取れる。

 目の前に立ちはだかるのは、先程までのゴーレムとは比べ物にならない程の巨体を誇る石人形。

 幾つもの石材が結集して出来た巨体。見上げんばかりの巨体であった。

 広間の壁と天井が部品になった分広くなった大広間。十二分に動けるようになった巨大ゴーレムが固まっていた6人に襲い掛かる。

 ゴ・ゴ・ゴ・ゴ・ゴ・ゴ・ゴ・ゴ・ゴ・ゴ・ゴ!!!

 大きい分、幾分か鈍い。しかし、その質量は脅威。何せ拳の大きさが人間の胴体級だ。流石にまともに喰らえば手足と頭だけが地面に転がりかねない。


 「皆さん、先程の作戦通りにお願いします!」

 「さっきのナァ!」

 「承知したにー」

 「ヌゥ………任せろ!」

 「ねぇねぇねぇ、アレ、僕一人だけで倒しても良いんだよね?構わないんだよね?」

 「そう急くな。この大きさだと、6人全員で倒さねばなるまいからのー。

 あと、それは死亡フラグという奴じゃないかのー?」

 物言わぬ巨人兵VS5人の立て籠もり犯と人質の闘いが始まった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る