シェリー君と愉快な立て籠もり犯達


 大広間から伸びる通路は5つ。


 広間から覗いてみるものの、直ぐに通路が左右に折れて奥が見えない。


 私ならば裏技で何処が正解の道か解らない訳では無い。が、ここは敢えて何も言わないで居よう。


 5つ道が有れば5つの成長の可能性が有るという事。ここは茨の道を選んで貰おう。


 「何処の通路から行きますか?」


 シェリー君が5人に訊ねる。


 右の壁沿いの前と後ろ2つ、左の壁沿いの前と後ろ2つ、更に正面奥の1つの、計5つの中から選択するようにという事だ。


 「どの道が当たり……って事は、解らないかナァ?」


 「残念ながら、解りません。


 この先にもあぁいった仕掛けが有る可能性は少なくない……どころか無い可能性の方が少ないです。」


 どころか、絶対有るねぇ。保証しても良い。


 通路をそれぞれ先が見えない様にして有る。多分、入った所で先程同様に通路と広間を繋ぐ道が閉ざされるだろう。


 なにより、仕掛けのゴーレムを出した時に塞いだ道を、ゴーレムを倒した後でわざわざ通れる様にしておいて、その先には何も無く、平穏無事でお宝迄一直線………なんて、罠を仕掛ける意味が無い。


 これを作った人間にはそんな善良性は無い。


 目一杯罠や仕掛けを施して侵入者を始末しに行くだろうさ。


 「戻るって選択肢は?」


 「見ての通り、本棚の方へ続く通路が石の壁で塞がってしまいました。逃げ場は有りません。


 もし、壁を破壊して逃げられたとして、間違いなく絞首刑確定ですが、それは構いませんね?」


 そう、先程のゴーレム進撃後、階段に繋がる道を確認した所、塞がれていた。


 ゴーレムとの立ち回りで気を取られていた事、階段を少し上がった、途中が塞がれていた事もあり、確認するまで6人は気付いていなかった。


 「進むしか無いですよにー……。」


 「ヌゥ……選択肢は無いと…そう言う事か。」


 「えぇ、残念ながら後戻りする事が出来たのは学長室までの話でした。」


 「ねぇねぇねぇ、シェリーちゃんはこの場所から出られる自信は有る?」


 「いえ、私もここに来るのは初めてなので……。正直、生き残れる確率は五分五分です。


 つまり、皆さん同様に私も生きるか死ぬかです。」


 「…………もう、答えは出たんじゃ無いかのー?


 もうこの6人で危険を承知で適当な通路に入って、死なない様にするしかないんじゃないかのー?」


 その通り。


 この状況では虱潰しにこのダンジョンを探索する以外に道は無い。


 罠有り危険有り命の保証無し。


 「他に道は有りません。


 進みましょう。」


 「OK、解った。


 じゃぁ、どの道を選ぶかはシェリー嬢に任せる。それで如何にかなっても、俺達は何も文句は言わない。


 皆、それでいいナァ?」


 「問題無いにー。」


 「ヌゥ…それが一番良いな。」


 「ねぇねぇねぇ、僕は賛成だよ。」


 「同意見かのー……。」


 「そういう訳だ。


 まぁ、お願い出来るかナァ?」


 最早シェリー君が人質だと覚えている人間は居まい。


 「解りました。


 全力で皆さんの力に成ります。」


 こういう訳で、シェリー君と愉快な立て籠もり犯達は茨の道へと進んでゆく事になった。

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