家探し6→探検
重い本の数々が5人の立て籠もり犯と人質1人の手によってどんどん本棚に戻されていく。
「『アリベリア生息のモンスターの生態(3)』は上です。
『社交界で滑らない話題50題』は下の方に。
これは確か右上に………」
配置を覚えていたシェリー君の指示の元、みるみる内に本が元に戻されていく。
「一体全体何で俺達はお片付けなんかしなけりゃならないのかナァ?」
「そう言えばそだにー…」
「ヌゥ、しかし、この中で最も思慮が有るのはあの娘。
我々が考え着かない『何か』を思いついたのかもしれん。」
「ねぇ、そう言えばあの子、さっき迄より笑ってない?」
「んー?あぁ、そう見えるのー。」
ぶつぶつ呟きながらも手を動かし、そうして本棚が元通りに並んでいった。
しかし、さっきと違う所が有る。それは上段一冊が抜けている事。そして、先程まで9割しか入っていなかった下段に事務机の書類が詰め込まれ、ミッシリと隙間が無くなっていた事だ。
「何で、俺達は夕食前の子どもみたいに元通りに片付けなきゃならなかったか?教えてくれるよナァ?」
「えぇ。先ず、この本棚を戻した理由。それはこの本棚にはとある仕掛けが有るからです。」
「?どういうことかにー?」
「説明します。が、先ず、本棚の奥を少し触ってくれませんか?」
シェリー君が、一冊分だけ抜けた本棚上段の空間を指差す。
5人が一人ずつ触り、首を傾げる。
「ヌゥ…………何か、穴の様なものが開いている?」
「そうです。この本棚の奥の板には細かい穴が空いています。
そして、本棚の奥を叩くともっと分かると思いますが、この本棚の奥には大きな空間が有ります。
おそらく、この本棚は何かの仕掛けで動く扉の様なものかと……。」
「ねぇねぇねぇ、それと片付けと何の関係が有るの?」
「この本棚。本の巻数が飛び飛び。しかも本が取り出せない程ミッシリと詰まっていました。
これは本棚としての有り方としてはおかしいです。
そこで、私は考えました。この巻数が飛んだ本は何の為に有るのか?と。そして、本棚の奥の細かい穴は何だろうか?と。」
「全部、仕掛けの為の何かの細工。ではないのかのー?」
「えぇ、私もそう考えました。
バラバラな巻数、後ろには穴。これは本棚をこうして動かす為に、有るのでは無いでしょうか⁉」
一冊開いた本棚の間に本を一気に差し込む。
シューッ
本棚の中の空気が本に押し込まれて細かい穴へと吸い込まれていく。
パチッ!
偽物の本の背表紙から何かが飛び出した。
「本がバラバラなのは、本棚を隙間無く並べ、本を仕舞った時に空気がこちら側に出るのを防ぐため。
その空気が細かい穴へ吸い込まれ、偽物の本に空気を送って仕掛けを作動させる為に有ったのです。」
偽本から飛び出したレバーの様なものを回すと、本棚が地面へと沈んでいく。
本棚の奥から、石造りの階段が現れた。
「さぁ、宝探しの探検の始まりです。」
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