家探し1


前回の話を飛ばした方用のダイジェスト:シェリー君が立て籠もり犯5人を説得して宝探しを始めた。











 「この辺に有るかナァ?

 金っぽいものはないナァ。盾やトロフィーなんて売れないしナァ。」

 「んー…………これは…価値が有るかもにー。

 ……………価値はあるけど、金にはならないかにー。」

 「ぬぅ…ふざけていないで真面目に探せ。」

 「ねぇねぇねぇ。これって何かの暗号かな?」

 「どれどれ………ふぅむ。どうやら校舎の新築の時の費用に関する書類、宝どころか金が減る話だのー。この学園の歴史書第1巻、今は未来の話をしてるんだがのー。寄付金の感謝状、新築費用全額を一人で賄った御貴族さんが居るなんて、贅沢な話だのー。」

 シェリー君の少し邪悪な発破によって生き返った5人の立て籠もり犯はジョブチェンジを無事果たし、立て籠もり犯→空き巣に無事チェンジを果たした。

 家探しをする様に、というか、実際に実質家探しなのだが、今の所まともなものは見つかっていない。


改めてこの部屋の光景を説明しよう。

 シェリー君と5人の立て籠もり犯が座っていた応接用のソファが部屋の中心に、小さなテーブルを挟んで二つある。

 窓からは空が見え、入り口から見た両側の壁には大きな棚が鎮座していた。

片方には下段に小さな冊子、中上段には大きな事典が隙間無く詰められた本棚。もう片方には、学術大会の成績優秀者に贈られたトロフィーや赤い色のオブジェや国から貰った賞状や盾が飾ってある棚が有る。

 窓側には一つ机が有り、学長としての執務に用いるのだろうか?その上には雑多な資料や本が幾つか有る。


 ソファには目立った加工の跡は見られない。

 縫い目を見ても、針で開いた穴の跡は無い。一度糸を解いて再度同じ場所を縫った形跡は無い。という事だ。

 ソファの裏や隙間に何か有るかと考えて探した様だが、そこにも何も無い。

 応接用のテーブルは如何かと探してみるも、特に仕掛けが有る訳でも無く、メモや刻まれた文字が有る訳でも無い。

 まぁ、一つ言えるのは、ソファにしても机にしても随分と上質なものをよくもまぁ揃えた物だ。

 前とほぼ同じ様な宿舎と校舎を作った挙句にこれだけの事が出来るとは、一体この学園の利益は幾ばくか?

「何か見つかりましたか?」

 二つの棚と学長の事務机を探している5人に声を掛ける。

 「無いナァ。」

 「特に金目のモノは…無いにー。」

 「ぬぅ…………成果は無い。」

 「ねぇねぇねぇ。本当にここにあるの?

 今の所手掛かりみたいなのも見つからないよ?」

 「そう言えば、『この学園に何かが有ると考えられる理由』は教えて貰ったが、『ココに有ると考えられる理由』は訊いてないのー。」

 絶望から希望に変わり、熱狂状態で判断力が低下していたが、今になってその状況から醒め始め、今度はこちらに猜疑心を向け始めた。

 如何する?

 「それは………ご説明しましょう。

 その前に、探す場所を替わりましょう。

 互いに見えている物が違うかもしれません。

 今私が探していたものを再度皆さんで探して下さい。

 今皆さんが探していたものを私が今度は探します。」

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