砕ける
「皆さん!聞いて下さい!皆さんが助かる可能性が出てきました!」
シェリー君が希望を眼に宿して嬉しそうに5人の嵌められた立て籠もり犯達へと駆け寄る。
「皆さん、聞いてますか?
宝がある可能性…いえ、皆さんの助かる可能性が未だ有るんです。
もしかしたらこの部屋にそれが有るかもしれません!一緒に探して「もういい!」
活き活きとした顔と声のシェリー君に比べて男達は沈み切り、
「もう俺達は疲れたんだ!止めてくれないかナァ?
苦しかったけど、真面目に懸命に生きてたら知らない間に借金負わされて!
今まで以上に真面目に懸命に働いても金は返せない!今まで以上に頑張っても今まで以上に苦しくなる!
で!だ!『一攫千金のチャンスが有る!』と言われて藁をも掴む思いで校舎に忍び込めば蜂の巣にされかけて!
もう逃げる方法は無くて何しても死ぬ!
たとえ万が一ここから逃げ切れたって貴族連中全員敵に回した!逃げ場なんてこの世界に無い!
詰んだんだ!何もかも!俺達5人はもう既に死刑宣告がされた死刑囚!
首に縄が掛かって後は足元の台が落ちて地獄へドン!
もう良い!逃げるのも!闘うのも!もう疲れたんだ!何をやったってどうせ無意味!俺達に生き方なんて選べない!死に方も選べない!もう、こうなる運命だったんだ!ならもう最期までの時間休ませてくれ!」
大の大人が耳を両手で塞いで首を振り回している。
まるで様な駄々をこねる子ども。全くもって…………笑える程にイイ感じに出来上がっている。
「教授?これは………何か知っているようですが………?」
大きな子ども5人の奇妙な状況に戸惑って訊いてくる。
「ン?あぁ、人間というのは何かを成そうとして失敗し続けると何かを成そうとさえしなくなる。
しかも、たとえ誰であろうと、赤子であろうと絶対に出来る様な事でもやろうとしなくなる。
無力感で何も出来なくなってしまう、否、
人間を完全に叩き潰すのに最も容易い方法だ。」
「……………これは…………その…………………。」
シェリー君にとって、この光景は初めて見るものだろう。
しかし、経験が無い訳では無い。
どころか、私と初めて会った時のシェリー君が有る意味この光景だ。
助けは無い。救いは無い。自分の外全てが敵で誰もが自分を害し、陥れ、自分が苦しみ悶える様を皆が望んでいる状況。
あの時、シェリー君は誰かが居なければ首を吊って死んでいた。
しかし、死ななかった。
私がシェリー君を止めたからだ。
さぁ、シェリー君。君は、どうするのかね?
パン! パン! パン! パン! パン!
平手打ちだった。
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