動く
シェリー君が座して待つことを決めて一時間。
十数分前、教室の外が騒がしかった。
この騒動で学園宿舎内から避難しているのだろう。それが証拠に、この教室の前を通る足音は一つも無かった。
そうして今現在。学園は静かなものだった。
外から足音がする事は無い。
教室内はすすり泣く声が偶に響くだけ。
男達は五人、教室の入り口二つに筋肉質と小柄な肥満がそれぞれ。窓際の角には猫背と中肉中背がそれぞれ押さえ、4人が教室を占拠していた。
そうして、五人目はというと、教室の外へ出て行き、何かをしに行った。
身代金の要求…………では無いな。
そんな事を考えている内に長身痩身の男が戻って来た。
「見つかったかのー?」
「イヤ……無かったナァ。」
戻って来た長身痩身は、期待に満ちた他の男達の視線に失望の表情で応えた。
「………何かを探している。様ですね。」
その状況を見たシェリー君がそう言った。
「あぁ、何を探しているのだろうかね?」
頭を突き合わせて考える5人を見てそう言った。
「どうする?探す奴等を増やすかのー?」
「ヌゥー……それでは見張りが減り、逃げられる可能性が有る。」
「ねぇねぇねぇ、皆でローテーションして探すのはどうかな?」
「同じ場所探しても意味ねぇんじゃぁねぇかナァ?」
「打開策……無いかニー………。」
そんなこんなで頭を悩ませる立て籠もり犯達。
「ねぇ、宜しいですか?」
彼らに一筋の光明を与えたのは、一人の少女だった。
と言っても、シェリー君では無い。
立ち上がったのは紫色の瞳、腰まで伸びた紺色の髪の令嬢だった。
その立ち振る舞いには、立て籠もり犯に人質にされている令嬢という雰囲気は微塵も無かった。
「何の用かナァ?お嬢ちゃん。」
睨みつける様に長身痩身がそう言った。
しかし、紫目は怯む事無くこう言った。
「先程から見ていて気付いたのですが、貴方達はこの学園で何かを探しているのですよね?」
「それが、どうかしたかのー?」
「ぬぅ……お前には関係ない事だ。嬢ちゃん。」
他の連中も凄んで見せるが、ものともせずに言葉を続ける。
「いえ、皆さん。私達には関係が大いに有ります。
そして、私には貴方達の悩みを解決する方法を知っています。
『皆さんが私達を見張る以上。ここに人員を配置しなければならない。しかし、そうすると学園内の探索に人員を割けない。』
私は、このジレンマを解消する方法を知っています。そして、その解消法は私達にとっても非常に有益です。
どうでしょう?悪い話では有りません。話だけでも、聞いてみませんか?」
警戒心を解く様な微笑みを立て籠もり犯に向けた。
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