脱出 消火 完了

脱出完了!

真っ暗闇の筈の夜は非常に明るく。50m先もはっきりと見えていた。

原因は頭上。宿舎から出て頭上に見える、燃え盛る火柱だ。

火柱の余波は校舎にまで及び、炎上とまではいかないが、ガラスが熱で割れ、外壁が若干炭化し、小さいが、あちこちから火の手も上がっていた。

職員棟も無論、その対象外ではない。

狙い通り、これで長期休暇中は学園内の何処の施設も使用出来無くなった。

さぁて、シェリー君は如何するかね?

「教授………………学園、焼けてしまいましたね。」

「あぁ。」

「夏休み…………………校庭でキャンプをすればいけますよね?」

「………………………何がかね⁉」

何かは解っているが、流石にそれはさせん。

「ですから夏休み中、校庭でキャンプをして……………」

「解っている!

止めなさい!流石の私も教授ストップだ!

ほら、ここは危ないから向こうに行きなさい。消火活動がそろそろ始まるようだ。」

そう言って示した先、校庭の中央で教師が何やら地面に魔法陣の様な模様を刻み始め、儀式めいた事を始めていた。

その周囲で生徒を取りまとめていた教師がシェリー君を見つけて魔法陣の教師達に向かっていった。

「生徒全員、避難が終わりました。宿舎内に人はもう居ません。何時でもどうぞ。」

「魔法陣の方も準備完了です。」

それを魔方陣の中央で聞いていたフィアレディーはこう言った。

「では、始めます。」

そう言ってフィアレディーが魔法陣の中央で何やら唱え始めた。


『集団大規模魔法術式:大瀑布』


地面が揺れ、炎上する宿舎の上空に何かが、否、大きな水の塊が生まれ、

ザーーーーーーーーーーーーーー!!!!

それは燃え盛る宿舎に滝の様に降り注いでいった。

シュー シューシューシュー!

火柱に水が当たって蒸発し、水蒸気で真っ白になり、凄まじい音が鳴る。

「魔法陣、アレの効果は、本来の魔法行使であるならば体内で行われる魔法の命令式を図式にする事で発動させる魔法だ。」

「……よくご存じで。

ですが、それは魔法の行使において効率が悪くなりませんか?」

「たしかに。命令式は複雑でサイズも大きい。

書くのに時間が掛かる上、スペースも取る。

しかも、本人が魔法陣無しで行うものを完全に図式化するのは困難故にロスや成功率が低い。

が、今まさに行われている集団大規模魔法術式において、その場合に限り、話は別だ。」

「と、言いますと?」

「複数人で同じ行動を取るためには知覚的情報共有が必要になる。

複数人で同じ目的の為に魔法を行使する場合においてこれは有効になる。

複数人で別々のタイミング、別々の角度で魔法を行使するよりもそちらの方がロスが少ないからね。」

「成程…………しかし、教授は何故そこまで知っているのですか?」

「この学園の図書館で学んだ内容+元々私が持っていた知識を行使すれば問題無い。

魔法も所詮は法則を持った数式。容易い。

さぁ、もうそろそろ消火が完了する。」

ジュウゥゥゥゥゥゥゥウウウウウ!

上空の水が無くなり、火柱が真っ黒な塊になった。




消火完了。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る