三姉妹
「何なのよ!もーぉ!!」
泥水で汚れた服を着替えながら部屋の壁や床に当たり散らす。
古くなった宿舎はギィギィ音を立てて部屋全体を軋ませ、揺らす。
「「無駄口叩いてないで早く着替えなさいよ!もう授業が始まってるのよ!」」
部屋の外から姉2人の声が聞こえる。
「我が妹ながら間抜けね。オーッホッホッホッホ!」
「自分の仕掛けた仕掛けに自分で引っ掛かるなんて……フフッ、フフフフフ。
得点は無いけれど、面白かったから遅刻させたことは大目に見てあげる。」
勝手な事を!
「私じゃないわ!!私は糸を強く引っ張った時だけバケツが落ちてくるようにしたもの!!
きっとあイツが上から私に掛けたんだわ!!」
確かに糸を触った。
でも、あんな風に触っただけで引っくり返るような仕掛けには絶対していなかった!
何故私がこんな酷い目に遭わねばならないのか?
私には落ち度なんて何も無かった。
仕掛けは完璧、計画も完璧、身の程知らずな下等存在の癌をこの聖域から排除する大義名分も完璧!!
ほら、落ち度なんて無いじゃない!!
なら何故私がこんな酷い目に遭っているのか?
「あの女……………今度は絶対成功させてやる!!」
頭がポカポカ温かくなっていくのが、頭に血が昇っていくのが解る。
「「何を言っているのこの愚妹は?」」
扉の向こうから呆れたような声が2つ、二重奏で飛んできた。
「次は」「私達が」「やる事に」「なっていたでしょう?」「順調は」「守りなさい。」
2人の声が途切れること無く、まるで1人で喋っているかの如く聞こえてくる。
「フフッ、フフフフフ。
あなたが失敗したか、アイツが何か細工をしたか……そんなことは関係無いの。
問題は、あなたはしくじったということ。
そして重要な事、それは私がこれからあなたに完璧な手本を見せてあげるということよ。
姉様、次鋒は私が務めます。宜しいですか?」
「オーッホッホッホッホ!良くってよ!!
長姉は長姉らしく妹に先を譲りましょう。そして、私が有終の美をもって格の違いを教えてあげましてよーッホッホッホッホッホッホ!!」
尊大に、高らかに笑い声を宿舎内に響かせる。
建物がその振動で僅かに軋んでいる気がするのは…気のせいだ。 「フフッ、フフフフフ。姉様、残念ながら御期待には沿えないかもしれません。
何故って?
可愛い妹の仇をこの私が討ち、この勝負は私が
姉様の出番は回ってこないかも…ご免なさい、我が愛しい妹。あなたのリベンジの機会を奪ってしまう形になりそう。
フフッ、フフフフフ。」
ガチャリ
扉が開いて3人が顔を見合わせた。
「ハハハ。」
「フフッ、フフフフフ。」
「オーッホッホッホッホ!オーッホッホッホッホ!!
さて、私の可愛い妹達、次に何をするか…勿論、解っているわよね?」
「えぇ、」「勿論。」
3人がそれぞれに目配せをする。
「遅刻をしたことを謝らなければなりませんね…ォーッホッホッホ…………。」
「『泥水をかけられた。』…なんて言い訳はしたら不味いわよね…フフッ、フフフフフ。」
「姉様方、申し訳ありませんでした…ハハハ………………………。」
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