溶ける
※今話は人によっては不快だ。グロテスクだ。と思われる内容が含まれています。
読む際はお気をつけて下さい。
飛ばす人は概要をこの次の話に載せておきます。
体が痛い。俺達は確かあの餓鬼に何かされて体を操られて……… 辺りを見回すと霧が出ているのか、白く濁って地面さえよく見えない。
立ち上がろうとしても、動くのは頭だけ。手足が言うことを聞かない。
「ウ゛!何の臭いだ?」
息を吸い込んで吐きそうになった。生臭いような、鉄が焼けたような、何かが腐った臭いが飛び込んできた。
鼻を塞ごうにも手足が上手く動かない。
「気が付きましたか?」
あの餓鬼の声が霧の中から聞こえる。
「何だ?何処に居る!?」
動かない手足の代わりに口と頭を動かして餓鬼を探す。近くに居るような気がするが、遠くに居るような気もする。
「直ぐ近くに居ますよ。」
「お前………俺達にこんな事してただで済むと思うなよ!!」
手足が動かなくても口があれば脅すのは簡単だ。
どんな手品を使っても所詮は餓鬼。
後で生きている事を後悔させてやる。
「『ただで済むと思うなよ』……ですか。
この状態で一体何が出来るのですか?」
強風が霧を吹き飛ばし、視界が開けた。
「!」
視界が開けて後悔した。見えなくて良かったものが目の前に現れた。
俺が今居る場所は手の上。
山のように大きな餓鬼の手の上に載っていた。
「な……な!」
言葉が出ない。
「ただで済まないのはあなたの方です。
まさか…無傷でサヨナラ出来ると…自分達が優位だと未だに思っていたのですか?」
手の上の虫けらを観察するように巨人の双眸がこちらを覗く。
さっきから動こうと…逃げようと手足をバタつかせる。
しかし、手足は主の死の危機に一切答えてはくれない。
「……頼む…許してくれ………モう何もしないから………」
「遅いですよ。
あなたは皆を傷付け過ぎた。あなたは私の怒りに触れた。最後通牒も無視した。
あなたには、この地の肥やしになって貰う他に無いです。」
ピクッ
体が遂に動いてくれた!!
巨人の視線とその存在から逃れるべく全力で手の上を走ろうとして………転んだ。
何かに
有るべき物。有るべき体の一部が………
「ウワアアアアァァァァァァァ!!」
足が溶けていた。
灼熱の鉄板に乗せたバターの様に、足首から先が無くなり、さっきまで足首から先が在ったであろう場所にはドロリとした赤黒い液体の水溜まりが在った。
「そのまま埋めても肥やしになるまで時間が掛かるので、溶かさせて頂きますね。」
その言葉が引き金であったかの様に、足首から膝にかけて溶解が始まる。
「頼む!!助けてくれ!」
「その頼みは既に聞き入れました。それを無視して踏み躙ったのはあなたです。」
「何でも言う事を聞く!」
「ですから、どうぞ肥料になって下さい。そもそも。言う事を聞かせる迄も無く抵抗は許しません。」
冷酷な双眸は徐々に溶ける俺を見て何とも思っていない。
無理だ!コイツには何を言っても無駄だ!
「誰か!誰か俺を助けてくれ!」
近くに仲間が居る筈だ。
しかし、誰かが助けに応じる気配も……そもそも人の気配が無い。
「あぁ、お仲間さんですか?
居るじゃないですか。そこに。」
………え?
その視線の先には巨人の手の平。
手の平には赤黒い何かがこびり付いていて…………まさか!
「あなたが最後です。」
体が溶けていく。
「止めろ……止めてくれ!」
声を震わせて懇願する。
「頼む。命だけは助けてくれ。」
尊厳を捨てて命を拾おうとする。
「俺は……未だ、未だ………」
慈悲にすがろうと手を伸ばす。
ボチャ
無慈悲にもその手が溶けて地面に撒き散らされていく。
「あ………」
視線が低くなっていく。身体の感覚が無くなり、手足だったものが地面に広がっていく。
「助けて…………」
下半身が無くなった。
「助けて……」
上半身が無くなって肺が溶けていく。
「助け て 」
空気を震わせる喉も無くなり
「た す け」
口が無くなり、
「 」
冷酷にこちらを射抜く目を最後に見た。
「教授………一体……何を?」
「なぁに、現実と幻想の間。夢であり、現実である物を見せているだけだ。」
目の前には五体満足、傷一つ無い賊が
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