魔王降誕
『魔法』というものを私は知った。
それは魔力というエネルギーによって世界の様々な変数を書き換える技術であり、要は蒸気機関の様なものだと私は考えた。
一応私も火の一つや二つは起こせることを確認したが、しかし、直ぐに問題が起きた。
今考えてみれば、魔力というものの性質を知らないが故に起きた事なのだが、雷や炎をある程度引き起こす事には成功したが、物質を作り出してそれを射出する事が出来なかった。
エネルギーによって物質を作り出すという事が理解言出来なかったのだ。
エネルギーを射出するならば魔力というエネルギーを火というエネルギーと運動エネルギーに変えるだけ。しかし、物質を射出するならば魔力というエネルギーを物質に変換し、それに運動エネルギーを付与しなければならない。
エネルギーの物質化。難易度としては非常に困難だ。しかし、それを容易に出来るにしては、文明の発展速度が遅過ぎる。要は魔法においてエネルギーの物質化は成されていないという事だ。
そこまでは解ったのだが中途半端な理解をしてしまった所為で、逆に実用に足る技術として確立するのに
まぁ、実用化は直ぐに出来るようになったさ。
要は私の仮説ミスだった訳だ。
魔力がエネルギーだというその前提が先ず間違えていた。
魔力。その正体はエネルギーでは無かった。
しかし、物質でも無かった。
その正体は、言うなれば半物質半エネルギー。物質の特徴とエネルギーの特徴の両方を持った、物質にもエネルギーにもどちらにも変化する、しかしそのどちらにも属さないものであった。
魔法とはつまり、魔力の一部を物質化し、一部をエネルギー化する事で変数に干渉する技術であった訳だ。
その仮定を元に魔法を使用してみた所、殊の外上手くいった。
端的に言えば、私も努力の結果、魔法を最低限使用できる様になったという事だ。
まぁまぁ実用には足る様になった。という事だ。
シェリー君は努力をして、私の講義に応えてくれた。
ならば私もそれに応えるべきだ。
教え授ける側が呑気に何もしないで居るのは怠慢だと、私も努力をして、新たに成長すべきだと、そう考えさせられた訳だ。
「ウルルルルルゥゥゥ」
「シュェェェッェェェェーーー!」
熊と蛇が私目掛けて突進してくる。
シェリー君、見ておきたまえ。理不尽な力とはこうやって返すものだ。
シェリー君同様に蛇を躱す。
問題はここからだ。蛇を躱すと熊が追撃を喰らわせに来る。
ここまではシェリー君の動きと同じ。あの髭面もそれは解っているだろう。が、髭面はここで動けない。
何故なら私は、蛇の体の側面で髭面の視界を遮り、操作できないようにしたのだから。
たとえこの二体が髭面の完全な統制下にあろうが、ある程度本能で動けるようになっていようが、二体と髭面、その両方の反応出来ない動きで、認識できない様に立ち回れば十二分に闘える。
「グゥゥゥルル!」「シェ-!」
お互いの体が弾かれる。
ここまでは魔法は一切使っていない。
理由は簡単。単に『魔法が無くてもこの程度ならば容易く打ち破れる』という事を示す為だ。
「少し、魔法を使いましょう。
あなた達、覚悟はよろしいですか?」
自然に、穏やかに笑った。
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