教授への大ダメージ

パチン!

賊が闇雲に振り回す剣や槍や斧の所為で村中に仕掛けた糸が斬られて弾けるような音が響き渡る

村の中央に仕掛けておいた糸は、頑丈ではあるが切断が出来てしまう糸であった為だ。

糸を限界まで張り詰めていた事もあり、糸が地面に落ちる間も無く弾けてどこかへ飛んでいく。

高強度による切断を想起させての牽制は失敗か。糸の強度的は大きな石の一つや二つぶら下げても問題無いレベルだというのに…………勿体ない。

まぁ、それは置いておいて………だ。

切り傷は与えられないものの、粘着糸の効果も有って、200人の賊達は間抜けな格好で、文字通り片手落ちの状態でシェリー君へと迫っている。

更に言えば、村の張りぼての家や沼、周囲の木という障害物ばかりの環境が、200人の軍勢という数の利を、逆に不利にする戦況を作りだしていた。

動き辛い肉体的要因と動き辛い環境要因の二つが200対1の不利が互角イーブンとなっていた。


シェリー君は奇妙な格好やポーズをした賊達を相手に、虚構の村で大立回りを繰り広げている。

「オラァ!」

右手を側頭部にくっ付けて、左手で斧を振り降ろす間抜けな姿の賊。

斧の一撃を躱しつつ、振り抜く斧を掴んで振り降ろす勢いを増させる。

「ノァッ!」

勢いよく振るった得物の重さと勢い、加えて予想外のシェリー君からの支援で、斧に振り回される形となって投げ飛ばされる。


「「キェイ!」」

背中合わせの状態で二本の槍を突き出す二人の賊達。背中合わせの状態で糸をくっつけてしまったのだろう。『背中は任せた。』的なノリだったら面白いのだろうが、息を必死に合わせて、蟹歩きをしながらシェリー君目掛けて槍を突こうと必死にもがく姿は、槍を使った斬新で奇抜で面白いダンスを踊っているような恰好で正直腹筋が痛い。

予想外の攻撃に私の腹筋も…無いが、かなりのダメージを負ってしまった。

「ブハッ……よもやこんな攻撃方法が………クフフフフフハハハハハハハハ!!!!!」

「教授、私もあの方々も真面目にやっているのですよ。」

爆笑する私にシェリー君が非難めいた口調で嗜める。

「「テェイ!」」

同時に槍が二本突き出される。しかし、背中合わせで突き出す事で威力と速度は半減。

何より、前方、つまり脇腹部分に槍を突き出して交差させる以上、こちらがギリギリまで相手に近付けば槍は届かず、体勢は不安定。つまり……屈んで足元に体当たりをすれば、


ボチャ

「「………………」」

二人仲良く前のめりに転び、頭から泥沼に突っ込んだ。

「ゴハッ!!!踊りのフィナーレが頭から泥にダイブとか………ブフククククク……ハハ…………腹筋に大ダメージだ…………。」

「……………教授?」

シェリー君から批判と非難と若干の侮蔑を含んだ声でたしなめられた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る