言葉が人間を為す
「囚われていた方々にはガスによる慢性的な障害は無さそうでしたし、既に回復の兆しを見せています。これなら特別に問題は無さそうですね。
それでは先ず、村人の説得と参りましょう。」
目覚めた眠り姫は初めに毒ガスによって衰弱した村人の後遺症や障害の確認をした。
先程まで青い顔をしていた死人達は太陽と沼地特有の空気を吸って、すっかり快復していた。
大きな問題は、日光浴不足と慢性的な酸欠、食事や入浴は中々劣悪ではあったのだろうが、短期間で救い出された事もあり、大した問題にはなっていない。
製造していた毒物の副作用も有っただろうがね。
まぁ、と言うわけで、シェリー君と二つの村の人々は数日後の賊の襲撃において全員を動員可能になった。
眠っている間に起きた事、状況は全て教えた。
あとは、シェリー君の説得次第だ。
ガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤ
「皆さん、聞いてください。」
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地面に背を付けている者、座り込んでいる者、泣きわめく者、悪態をつく者………………生産的な話をしていなかった人々が全員口を閉じ、大して大きくもない、一人の少女の声に耳を傾けた。
静寂を求めたくば、怒号は要らない。
自分の周囲数名に語り掛ければ静寂は伝播し、たちどころに周囲の眼と耳は自分に向かう。
「皆さんは今、自由の身です。
労働は強制されず、毒の空気に侵されず、鉄格子で自由は奪われません。」
皆が黙って耳を傾ける。
『自由』という言葉によって人々の顔が少しだけ綻ぶ。
「しかし、この自由はほんのひととき。仮初めの自由。
すぐさま略奪者はあなた達から自由を奪うでしょう。」
人々がまたしても暗い顔に戻る。
「では如何しましょう?
彼らを殺しますか?
えぇ、出来ましょうとも。皆が刃を取り、一丸となれば賊を一人残らず……皆殺しに出来ます。」
いきなり口にした過激な言葉によってその場に居た者が凍り付いた。
それはそうだ。シェリー君の表情には殺人の狂気や
言葉さえなければ美しい微笑みが其処には在った。
が、それ故に、人々はそこに狂気と悍ましさを感じ取った。
もっと言えば、シェリー君を知る人間はそんな言葉を口にする等と考えてもいなかった事も有り、その恐怖心は一入であっただろう。
あぁ、例外として、さっき私が脅し……囁いた男も相当蒼い顔をしている。
「ですが……それで良いのでしょうか?
刃に対して刃、野蛮に対する野蛮、下衆の行いに下衆で応える…………それは、私達が人として死んでしまうのではないでしょうか?
私は……それは嫌です。
たとえ相手がどんな非道をしてこようと、私は、同じような非道に堕ちる事は決して許したくありません。
暴力に暴力を以て制する事は人の為す事では有りません。
私は、非暴力を以て暴力を制したい、人間でありたいと思っています。」
眼差しが恐怖から尊敬と畏怖に変った。
「しかし、私一人では暴力の前には無力です。皆さん、お願いします。
どうか力を、私達が人間であり続ける為の力を貸して下さい!」
ある者は力強く頷いた。
ある者は吠えた。
ある者はシェリー君に何を為すべきか問うた。
ある者は涙を拭いた。
ある者は立ち上がり
ある者は
ある者は
ある者は
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シェリー君を中心として、非暴力不服従の
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