集団逃走2

先ず、シェリー君のやった事は衣装チェンジ。つまりは変装だ。

監禁されていた村人達の内の一人から服を借りてあの毒物精製場に居ても不自然に思われない格好になった。

その後、檻の錠前を破壊した。

なぁに、私のピッキング技能を叩き込んだシェリー君の前でなら、この程度の檻は障子紙程度のセキュリティーでしかない。

ガチャリ ガチャリ ガチャリ

私の考え通り、時間の問題にさえならなかった。

檻から出て半分自由の身になった村人達は取り敢えずそのままに、作戦を話して、合図が有るまで見つからない様に待っていて貰う。

向かう途中に石を拾い、シェリー君にとある加工をして貰った。

賊に見つからない様に、更に石を加工して貰いながら、シェリー君はあの装置で働いている、事情を知らない人々の元へと向かい、こう言った。


『ここから逃がしてあげる。自分が特定の行動を取ったら自分の所へ集まって。』と。


そのメッセージが全員に行き渡った頃、満を持して来る前に加工しておいた石で投石を行った。

石はある程度重力に逆らい、そうして落ち……なかった。

私がシェリー君に言った事。それは装置の蒸気の排出口に石を投げ入れる事。

丁度排出口を塞ぐような形状、サイズの石を、上記の排出口に投げ込んで蒸気の排出を堰き止める事を目的としていた。



蒸気は装置内部に溜まり、装置内部で逃げられずに装置自体を内部から圧迫し……爆ぜる。

シェリー君と村人には一箇所に集まって貰い、最も蒸気の爆発被害が少ない場所で爆発を凌いでもらった。

シェリー君の風の魔法というのがここで火を吹いた(実際は風を吹いた)。

風で密集した村人を覆い、爆風によって飛び散る装置の破片を見事撥ね退ける事に成功した。



そうして今、混乱する賊共の騒ぎに乗じて我々は村に向けて逃走をしていた。

あの装置は重要な物である事、人の来ない道を選んだ上で最短距離を進んでいる為、逃走自体は順調に進んでいる。




因みに、ここまで私は指導こそしたものの、肉体主導権はシェリー君にあった。

中々な成長が見られて私は嬉しい。

学園内での細工は犯人と犯行の隠匿性に重きを置いている為、今行っている行動とは種類が全く違っているが、ここでの行為は無駄にはならない。

何時か………いや、直ぐに役に立つ日が来る。






「オイ!お前ら!何してる!」

怒鳴り声が洞窟内に響き渡った。

残念ながら誰にも見つからずに駆け抜けるのは無理だったな。

まぁ、そもそもタイルの所の見張りに見つかる事は前提だったから2・3人増えた所で如何という事は無いのだがね。

「さぁ、シェリー君、迎撃開始だ。」

「お任せください。」

シェリー君の目がキラリと煌めいた。

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