かいてきなたび 21
あちこちで叫び声や戦闘の音が聞こえる。
やられた!
集団戦のデメリットである同士討ちを引き起こしやすいこの環境。これでは自爆確定だ!
この混乱を止めるにはどうするか…………落ち着け………落ち着け!落ち着け!!!!
落ち着け!
落ち着かなければ………命懸けの状況では死を意味する!
先ずはこの視界不良を如何にかしなければいけない。
自然に風が解決するのを待つ?
違う!
この土埃を先ずは吹き飛ばす!
その後で混乱を収拾後、馬車を確実に狙う。
天に拳を掲げて魔法を唱える。
『
ドッ!
正面からいきなり現れた影が迫り、首に手刀、鳩尾に正拳がめり込む。
「………ゴァ ガ ェアァァ……………」
声が出ない。
体の力が抜けて行く。
何者かの影が遠退く。
違う…………意識が遠退いていった…………………
ドシャァ
「『モリアーティー拳闘術』。このまま当分、君達には踊っていて貰う。」
ボロ布を着ていたあの男に対し、そう言った。
無論、喉と鳩尾の二ヶ所同時に確実な打撃を与え、最早聞く事は出来ないだろうが…………。
魔法というのは非常に便利である。厄介な代物である。
簡易ではあるが、人為的に天候をある程度操作出来たり、マッチや火打石無しで火を起こしたり、冬でも無いのに熱を奪って水を氷にしたり、光を屈折させて虚像を見せたり………………
それはこの短期間で十二分に理解した。
身体能力を爆発的に増強したり、巨大建造物を破壊したり、人間に幻覚剤や薬物無しで幻覚を見せたり、非常に便利なのは分かる。
が、それを妄信するあまり、それに頼り切りになっている傾向も有る。
そこに集中するあまり、他を疎かにしている。
ボロ布男がもし、私を警戒し、油断しないで魔法以外の方法を使っていたら私はこの手段以外の手段を用いていただろう。
が、魔法を妄信し、『取り敢えず魔法で如何にかしよう。』と安易な方法に踏み切った結果、こうして私に未然に潰された。
読み易い。
読み
まぁ、どちらにしろ、パニックをより効率的に起こしたければ、指揮をする人間を早めに黙らせるのは定石だがね。
「さぁ、では出発しよう。」
シェリー君にそう言う。
「えっ⁉大丈夫なのでしょうか⁉」
響き渡る鍔迫り合いの音と叫び声の合奏を聞いてそう言ったのだろう。
「大丈夫だ。もうじき土埃が晴れて皆冷静になるだろう。
そして、冷静になった頃には私達は遥か道の先。追いかける事はもうしない。」
「そ……そうでしたか…………」
私の解説にホッとしたシェリー君。
「戻ろう。」
そう言って、土埃が薄くなっていく中、私は賊をいなしつつ、馬車へと戻っていった。
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