かいてきなたび 20

またしても賊を見つける。

タッタッタッタッタッ………………タッタッタッタッ

「………………誰だ⁉」

賊は棍棒を構えて周囲を警戒する。


ザッザッザッザッザッ………………         タンタンタンタン


タンタンタンタン    タッタッタッタッタッ


タッタッタッタッ             ズズズズズズズズズズズズズズズズズズズ


     トトトトトト      ダダダダダダダダダダダダ        トトトトトト   

  トトトトトトトト    トトトトトトトトト           ササササササササ


サササササ        ススススススススススススススススススススススス 


   タカタカタカタカタカタカ         ダンダンダンダンダンダン   


ダンダンダン      ダンダンダンダンダンダンダン     ッズッズッズッズッ


ズッズッズッ トトトトトトトトト    ザザザザザザザザザザザザザザザ   


       ザザザザザザザザザザザ        スッスッスッスッ  


  スッスッスッスッ     スッスッスッスッ  スッスッスッスッ   


    テテテテテテテテテテテ           トントントントントントン


トントントントントントン


   テクテクテクテクテクテクテクテクテクテク            パタパタパタ


タタタタタタタタタタタ


     スーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



敢えて足音を立て、かと思えば足音を消し、足を地面で擦る様に歩き、叩くように歩き、引き摺る様に歩き………………様々な足音を二本の足で生み出し、全方位から聞かせ、視覚と聴覚の両方に混乱を生み出させる。

まるで、幾人もの人間に囲まれているかのように錯覚させる。

「お……お前ら誰だ⁉

味方か?敵か⁉返事しろ!」

蒼い顔をして土煙の中に目を凝らして正体を見つけようとしている。

返事の無い時点で敵と直ぐに解って然るべきだが、最早この男はそんな事すら気付けない程に恐怖に支配されていた。

賊は見えないが故に、土煙の向う側に想像によって幻想の敵対者を幾人も創り出していた。

「クソォォォ!」

闇雲に突撃を始めた。

その先には人影が有った。

「喰らえ!」


ガッ


棍棒を一閃。人影を完全に捉える。

「ガッ!」

棍棒は味方目掛けて見事振り下ろされた。

「視界が少し悪いだけ。凝視すれば相手が敵か味方か容易に判別できる。

背後を取っているのにも関わらず、背中を叩かれただけで危害は加えられていない。

足に廃材が刺さっただけで特に誰かから刺された訳では無い。

背中にぶつかって来ただけなのに凶器で襲い掛かる。

声を掛けても返答は無いのに敵か味方か訊き続けて自分の居場所を敵に教え続ける。

相手は4人しか居ないのに、明らかに4人以上の足音が聞こえる。要は一人で幾つも足音を鳴らしている。

これが一人で、冷静さを失わずにいたならば、ここまでうまくはいかなかっただろう。

統率力無き集団、判断力を失った集団以上に脅威足り得ない集団など居ないのだよ。」

「………………………皆様、大丈夫でしょうか?

慌てて相手の方を武器で傷付けたり………誤って殺めてしまったり………その可能性は……?」

シェリー君はこの状況で相手を心配していた。

それは博愛が根幹に有るが故の気持ちであろう。別にそれは彼女の中では意識的に考える事では無い。反射的なものだろう。

だが、それでも、随分と余裕を持てるようになった。

相手を殺す事は容易い。

殺す、それは即ち、自分の命だけ守り、相手の命を蔑ろにしてしまう事を意味する。

独りよがりで自分の命だけを気にしていれば良い。

人を活かす事はそれに対して困難を極める。

両者の命を守り切る必要が有るからだ。

「問題無い。

全員怪我はしても死者は出ない様にしておいた。

このプロフェッサーモリアーティーを信用したまえ。

さぁて、混乱が蔓延している今の内に、仕上げをするとしよう………………………………」

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