かいてきなたび 13

ガタンゴトン・ガタンゴトン、馬車は、重く、ゆっくり道を進んでいる。

馬は少し疲れ気味、しかし、急がせていない、歩くようなスピードで進むお陰か、そこまでの負担にはなっていないようだ。

御者を交替しつつ、ゆっくりゆっくり馬車は進んでいく。

「一体、どこに進んでいるのでしょうか?

行先は……変更していないのですよね?」

「あ~~~……どうしようかね?」

赤毛女が首を傾げる。

「この先には道が二つに別れてて……どうしようかって思ってたんだけどねぇ。

片方は近いけど危険性が高い道。

もう片方は遠回りな代わりに町が有って、安全な道。

シェリー、あんたの村はどっちの方が近いんだっけ?あぁ、危険な方か。

アタシ達はどっちでも良いんだけど?…………でもねぇ。」

「俺達はシェリーちゃんの村の先に用が有るからなぁよぉ。」

「私はどちらでも……皆様のご希望は?」

「どっちがいいか………。

そりゃぁ、遠回りに決まってるじゃないか。」

「そりゃぁよぉ。シェリーちゃんと長く居られる方だぁ。

それに、元々そっちに行く気だったしよぉ。」

「そうなんですか?」

「まぁね、積み荷を危険に晒すような真似、商いやってるならやらないさ。

特に、夜の件が有る。

未だ警戒は怠らない方が良い。

あんな化物そう何匹も居ないと思うんだがね………」

「……そうでしたか…成る程。

では…次の目的地は……?」

「林檎で栄える街、ジヘンさ。

聞いたね!?」

御者席の大男に問いかけた。

「ジヘンですかい?解りやした。」


パシン


次の目的地が決まった。

「……………ところで、そいつは何だぁよぉ?」

細男が指差した先には黒い毛玉が居た。

「?それは先程言っていた熊ですよ。

ほら、夜に出た猛獣の代わりに居た………。」

「シェリーちゃぁん、連れて来ちゃったのかぁよぉ?」

細男が呆れる。

今朝の一件はシェリー君から三人に伝えてある。

あの熊とこの熊の関連性は敢えて伝えていないが、彼らはそれに対して何も言わなかった。

それでも、警戒している辺り、間抜けでは無い………筈だが。

「いえ………私は放してしまおうと思っていたのですが………」

シェリー君が言葉に詰まる。

「じゃぁ、デカンかぁ?おぃおぃ、デカく無いとは言ってもよぉ、熊なんだぜ?こいつはあの化物熊の居た場所に居たんだぜぇ?デカンよぉ………昨日何に殺されかけたか忘れたのかよぉ?」

そう言って細男が大男に声を上げる。

「あぁ?熊ぁ?

ソイツは俺じゃ無いですぜぇ!」

「シェリーちゃんじゃぁない。俺じゃぁない。デカンでもない…………まさか…………………」

「えぇ…………あの……………」

そう言ってシェリー君が申し訳なさそうに見た先は赤毛女。

見られた当人は何も言わない。真っ赤になって黙っていた。

「良いじゃないか………あんなところでたった一匹。

夜になれば化物に襲われるかもしれない。そもそも食べるものが無い。

良いじゃないか!一匹ぐらいアタシらが見たって!」

間抜けでは無いが、抜けてはいた。

「……………………………」

「……………………………」

「……………………………」

「……………………………」

沈黙の中、ガタンゴトン・ガタンゴトンという音だけが響いていた。



馬車が目的地に着いたのは昼過ぎだった。

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