かいてきなたび 7
豊かな土地にもかかわらず、生き物が見えない。
伝染病の可能性も考えられた。しかし、病気ならばそこら中に動物の死骸や骨が転がっていても良い筈。それが無かったとなれば、次は密漁や乱獲?生物の気配が全く無くなるレベルで?獲物は、ハンターは、痕跡は何処に消えたのかね?
轍が消えかかっている様な跡しかない街道を、密漁者は馬車も使わずどうやって?魔法?それは考え辛い。
文献を見た所、そして、今の所、それだけの物量を運搬するには異常な魔法の技量とエネルギーを要する。人ではない。
この環境下、状況下において生き物の影が無いのは矢張りおかしい。
では…………どういう事か?
痕跡や死骸が無いという事は、つまり、痕跡や骨さえも残らない掃除屋が居るという事だ。しかも、この環境下で居るべき大量の生き物を一匹残らず掃除するような狂暴で
ヒヒィン!ヒヒィン!ブルルルルルララララ!
近くに繋ぎ留めてあった馬が首を振って逃げ出そうとする。
「教授、何だかんだ言って私達の事を思ってらしたのですね。有り難う御座います。」
「あぁ…まぁ。」
実はシェリー君が気付いてない事を期待して、間抜けな三人組を叩き落して私の沽券を如何こうしよう………とは思っていなかった。
まぁ、それは構わない。置いておこう。そのままにしておこう。
問題はシェリー君の観察力が飛躍的に上がった事だ。良い傾向だ……………。
「では、シェリー君、『特別講義』を始めようか?」
「御指導御鞭撻の程、宜しくお願いします。」
投網を木材で出来た投擲装置にセットして闇の中に目を凝らす。風で草むらが揺れる音しか聞こえない。が、解る。
その音に乗じて迫る悪意が。
焚き火に照らされる御馳走達を喰らおうとする殺意が。
近付く。
「皆さんを起こしますか?」
「構わないが…今やれば4人纏めて猛獣の遅めのディナー確定だ。」
投擲装置に手を掛ける。
ガコン!
網が夜空に向けて発射され、
バサァッ
グァウグルゥルルルルルルル!
網が何か大きなものを捕らえた音の後、猛獣の呻き声が聞こえた。
「なんだい!?」
「何が有ったんですかい!?」
「なんだぁよぉ?」
今の派手な音で三人ともやっと目が覚めた。
「野生動物です!皆さん気を付けて!」
油断は出来ない。
呻き声を立てた後、直ぐにまたしても音が消えた。
猛獣は日中にも我々を襲えただろうに、姿さえ見せなかった。しかも、足跡一つ発見されていない。
今、我々を襲っている猛獣はかなり賢い。
少しでも気を抜けば、シェリー君は殺られるだろう。
フッ
が、私はここで体を返した。シェリー君に主導権が渡った。
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