かいてきなたび 1
フッ
体を返す。
「いいえ!大丈夫です。」
あたふたしながらシェリー君が荷物に引きずられそうになりながらそう言った。
「どうしたんだい?こんなトコでお嬢ちゃん一人、この先に用かい?」
周囲に村も何も無い居場所。
太陽が煌々と照り付け、日陰の無い道。
1人で、しかも徒歩で荷物を引き摺る少女。
どう考えても不審だろうな。シェリー君は。
「えぇ、この先の村に里帰りを…………。」
「へー、里帰りかい。近くなのかい?」
「えぇ、あと数日で着きます。」
「………………………数日⁉」
女はあんぐり口を開けた。
確かに、少女がこんな場所を徒歩&重そうな荷物を持って歩いて数日歩き続けるだなんて正気だとは思うまい。
私の様な世界最恐クラスのセキュリティーが存在しない限り、暴漢や獣たちの餌食だろう。本来ならば、どう考えてもこんな少女一人で出歩いては無事では済むまい。
「……………後ろ、乗りな。」
「はい?」
「こんなトコお嬢ちゃん一人で歩いてたら危ないでしょーが!
後ろに二人くらいヤローが載ってるけど、大人しい筈だから…………というか、歩きで行くよりも確実に安全だから!近くまで乗ってきな!」
君も私から言わせればお嬢さんだが…………まぁ、それはいいとして、ぶっきらぼうだが言っていることは道理だし、優しいじゃないか。
「シェリー君、これも何かの縁だ。ご厚意に甘えるとしよう。」
「そう、ですね。歩いていくよりも早く着きますものね。」
「ホラ!乗るのかい!?乗らないのかい!?というか………さっさと乗りな!」
姉貴感を前面に押し出して一喝する。
「有り難う御座います!お言葉に甘えさせて頂きます!」
「それでいい!
お前達!相乗り客だ!荷物運んでやんな!」
後ろの幌馬車に怒鳴る。
話を聞く限りでは男が二人程同乗しているらしい。
「なんですかい?」「何だよぅ?」
かなりの巨漢と痩せた男という対照的な男が二人、馬車から降りて来た。
「言っただろ!この娘、数日間このカッコと荷物で歩いて家に帰るって言ってんのさ!」
「おいおい、そいつぁ、」「無理だろぅよぉ。」
息が合う。
無理では無いのさ。
私が居れば戦地に有っても無傷で通り抜けが出来る…………………いや………………それは無いか。
私なら戦地をより地獄にするか………はたまた両軍を崩壊させるか…………まぁ、それはいい。
「だから言ってんだろ!ホラ、デカン!そっちの娘の荷物持ってやんな!
パニンニ、そっちの娘を馬車に乗せてやんな!」
「解りやした。」「スカーリ姐さん。」
そう言って大男が荷物を、細男がシェリー君を馬車に案内する。
「良い方達ですね、教授。」
「あぁ、良い旅になりそうだ。」
少し当初の予定とは違うが、これはこれで良いだろう。
「さぁ、出発だ!」
スカーリと呼ばれていた赤毛の女はそう言って手綱を握った。
パシン!
ヒヒーーーン‼
馬が威勢よく嘶く。
こうして、荷物とシェリー君を乗せた馬車は轍の跡が残る道をガタンゴトンと重く、ゆっくりと走り始めた。
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