道中
学校の外を歩きながら、私達は話をしていた。
「シェリー君、先ずは如何するかね?
君の支援者の元に行くかね?」
「いえ、流石にブリティッシュ家の御屋敷迄は…………先ずは私の故郷に帰ります。」
「それはここからどの程度の距離かね?」
「………徒歩でしたら………数日と言ったところでしょうか?」
フム………この荷物で数日か……………………。中々骨が折れそうだ。
しかし、この道では如何こう手を打てる問題でもあるまい。
先ずは歩くとするか。
「君の故郷はどんな場所なのかね?」
「どんな…………と言いますと………」
「すまない。疑問が抽象的だった。
私が言いたいのは…………そうだな………………………私は今までこの学園とその周囲にしか行ったことが無いから、君の知る村や町がどんなものか知らない訳だ。
というか、私の知る村や町との相違が解らない。」
「あぁ、そういう事ですか。
私の村はデンシー村と言って、周囲を湿原に囲まれた、豊かとは言えない土地です。
皆その日を暮らすことで手一杯。余裕の無い………村でした。」
「………済まない。シェリー君。」
「いいえ、大丈夫です。余裕が無いのは私が卒業して、お金を稼げるようになる迄です。
その為に私はあの学園に居るのですから。
あと10年、いえ、数年であの土地は誰もが羨む豊かな土地になります……いいえ!します!」
その眼には混じりない、鋼の如き強靭な、それでいて黄金の如く輝く彼女の意志が見て取れた。
「このジェームズ=モリアーティー。君のその、鋼と黄金の意志に敬意を表し、私の持てる全ての叡知を持った君の夢の実現に手を貸そう。」
そう言ってまたしてもこの現実に引き戻される。
「そう言っておきながら、私ともあろう者が……………あぁぁぁぁぁぁ…………………………………………………………はぁ………………。」
「教授!大丈夫ですよ。丁度良かったんですって!」
「いや…………矢張り環境の変化とはストレスに成る。
新たな環境に適応するまでに君の勉学の邪魔に成ってしまうだろう。」
「教授、大袈裟ですって!
改装されれば以前の宿舎よりも圧倒的に快適になる筈です。
その期間を丁度長期休暇に合わせて頂いたのはむしろ私としては良かったんです!
後期になったら新しい、床が軋まない、綺麗な宿舎に私達は住めるんです!」
シェリー君の教授ともあろう者が教える側たるシェリー君にここまで励まされるとは…………
私も未だ成長の余地があるという事か。
「あぁ、シェリー君、有難う。
後期は前期よりも私の冴える頭脳を見せてあげよう!」
「期待しています。教授。」
そう、今はアールブルー学園の前期授業が終わり、
我々はシェリー君の実家に向けて長期休暇の帰省の道中だった。
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