データ収集と予想外の変数



「では、協力をするにあたり、色々訊かせて貰いたい。

さっき言った通り、記憶喪失でここが何処でどういう場所か解らない。

最低限知らねば式は成り立たない。

と言うことで先ず、君とこの学園について話して欲しい。」

式を構築するにはデータが不可欠。

より正確でより大量のデータが有れば有るほど式の完成度は上がる。

「解りました。

私は、私の名前はシェリー=モリアーティー。アールブルー学園六年生。16歳です。

元々はお金も身寄りも無かったのですが、ブリティッシュ家のヴィラン様に学力を見込まれ、この学園に、特待生から外れる迄は資金援助をしてやる。勉強を許す。という約束を頂いて、参りました。」

成る程。特待生だの何だの言っていたのはそう言うことか。

高い学力をキープする間はここに居られる。

頭が悪くなったらアウト。

なかなか合理的な方法で緊張感を与えるものだ。

「そして、ここはアールブルー学園。

八年制、全寮制のこの国最大の最高の叡智と品格と歴史ある女学園です。」

おぉっと、私は見えなくて良かったみたいだな。

ここは男子禁制の花園らしい。花園万歳。幽霊万歳。



まぁ、見掛けだけなら…………な。



頭に豚嬢が浮かんだ。

あれがこの国の叡智と品格と歴史ならば……………この国は一度滅ぼしてしまって一度根底から作り直した方が良い。



「この学園は貴族の令嬢方が集まる。本当にお嬢様学校。………………いいえ、もしかしたら未来のこの国の妃が居るかもしれない、未来の妃学校なのです。」

成る程。ここで教養や学を身に付けて王子に取り入る。と言ったところか。

……………………あの豚嬢を好む人間がこの世に居るのだろうか?

「聞いてよいかね?非常に訊き難い事なんだが……………」

「………何でしょう?」

「この学園には君を庇う人間はいないのかね?」

 先程のあれだけの怒号。

 他の部屋に誰も居ないのならば話は別だが、そんな事は無いだろう。

 正義の味方面した輩は何処にでも居る筈。お節介が駆けつけてもいい筈だが……………………まぁ、今までの状況から推して然るべきなのだがね。

 「…………居ません。そんな人は。

 貴族でも無い、身分の卑しい場違い。そのくせに生意気にも自分より勉強が出来る奴。熱心に先生に訊くフリをして胡麻をする卑しい奴。

 そんなの誰が庇います?」

 一応訊いただけさ。

 正直、訊くのもどうかと思ったが、データ収集は確実で無いとな。

 「つまりこの学園の生徒は全員敵。そう考えてよいのだね?」

 「そう考えて頂いて差し支えないでしょう。

 無関心という方もいらっしゃいますが。」

 残念だが、知っているのに無言なのは共犯と言って主犯同様に罪人だ。

 「教師は如何なのかね?

 奴等はそれについて何か言わんのかね?」

 これも我ながら馬鹿な質問である。

 腐敗した異界でそんな正義の真っ当な教師……恐竜と同じ扱いと言って良い。

「表面上は良い生徒を装っていますので。気付きません。

それに、知った所で身分の卑しい私を庇う意味など…………。

一応。気付けば注意する方もいらっしゃいます。」

OK。つまり味方とは言えない訳だ。

 「取り敢えず最後に………………………………………君は何をされているか、どんな危害を加えられているか教えてくれるかね?」

 これを聞かなかった理由。

 おそらく、これを聞いた後にまともな応答が出来なくなると踏んだからだ。

 しかし、これを最後にして良かったのだろうか?そう私は思った。

 何故なら、この変数が最も予想外だったからである。

 「様々です。罵詈雑言に暴力から始まり、私物を隠されたり、捨てられたり、燃やされたり、濡れ衣を着せられたり……………で攻撃されたり、おかしな挙動をさせられて笑いものにされる事も有ります。」

 そうそう成程、罵詈雑言に暴力に魔法ね…………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………






ン⁉

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