美少女と豚
この身体的特徴は……十代半ばの少女?⁉
華奢な手足、そこには傷や火傷、皺、そして紫外線に未だ曝された跡が無い。二十年と経ていない肌だ。しかし、手にはペンを長時間握っている人間特有のタコが在る。
鏡に映るのは、か弱そうな乙女の顔。ここにも傷や皺、弛みやシミの類は一切無い。
私の身体ではない。肉体を動かす時に最速最大効率な動きをする為、治療を施す為、変装をする際の変装対象と自分の差異を明確に分析し、それを0に近付ける為に計算は必要。故に、必要最低限、自身の身体の数値は全て記憶してある。
今の腕の長さ、五指のそれぞれの長さ、手首の太さ、足の長さ、足のサイズ、足首の太さや心拍数の平均値、視力、握力、関節の可動領域、声の高さ、爪の長さ、髪の長さや色彩まで数値として把握してある。
しかし、そのどれもこれも今の自分が観測している数値とは全く違う。
ビシビシビシビシビシビシ!!!!!!!
「ガァッ!」
頭が割れた様に痛み、手鏡の美少女の顔が歪み、視界に電撃と亀裂が走る。
吐き気を催し、手足から力が抜けて手鏡が落ちる。
私hあ、だrえdA?
私の名…………がッ!
私の……故郷………………ああああああああああ!
私は………………誰だ?
「あなた、誰ですか⁉」
子どもの声が聞こえた。
頭を抱え、頭痛が治まってきた所でゆっくりと目を開ける。
目の前には黒髪に黒目の美少女が居た。
さっき、鏡で見たあの少女が、不安そうな顔で、こちらを怯えた眼で見ていた。
「あなた………幽霊?悪霊?悪魔?ここは宿舎の私の部屋?
何で?やっと死んだと思ったのに!なんで!?ここに居るの?何で⁉」
息を荒くして、目を真っ赤に腫らし、私に対して憎悪にも似た恨みの眼差しを向けていた。
どういう事だ?悪霊?さっきまで見ていた鏡は何だったんだ?
そんな疑問を尋ねようとした矢先。
「モリアーティー‼シェリー=モリアーティー!」
ドンドン
乱暴なノックと少女のどなり声が聞こえる。
辺りを見回す。
窓、簡易的なベッド、勉強机、後はテキスト、アレは…クローゼット?………他には、細かいものは有れど、殺風景な部屋だ。
寄宿舎。全寮制の学校の一部屋。と言ったところか……………。
窓の反対側、木製の扉に向かって少女は走り、鍵を開けて先ず頭を下げた。
「はい、申し訳ありません。」
黒い髪を振り乱し、謝罪する。
謝罪の先に居たのはブクブクと太り、
見たところ、監督の先生……ではないな。
年齢は十代半ば、重度の肥満と栄養の偏りで眼が濁っている。
「やかましいわよ!勉強の邪魔ッ!」
「申し訳ありません。コションさん。」
ハハハハハハハ!よりによって
口にお菓子の欠片をくっつけた、正に豚!ハハハハハハハハハハハハ!
肥満の要因は過度の間食だな……これは。
「アナタ……………誰にモノ言ってるの?」
頭を下げる少女。私を悪鬼羅刹や妖怪変化の様に言った……『シェリー』と言ったか?
彼女を見下し、正に見下し、
「
あろうことか少女の無防備な後頭部をむんずと掴み、地面に叩き付けた!
それに対してシェリーという娘は一切反撃しない。抵抗もしない。受け身さえも取らない。
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