第74話 受験は団体戦
「受験は団体戦だ!本番までクラスの力を合わせて、受験を乗り越えよう!」
朝のホームルームから担任が熱く語っている。
「このクラスのみんなは、ライバルなんかじゃない、仲間だ!自分一人が辛い勉強をしているのではない、みんな同じだ。励まし合い、教え合い、共に受験に立ち向かって、みんなで合格を勝ち取るんだ!」
それもそうか。自分だけで勉強していると、焦ったり、悩んだりするけど、みんな同じだから弱音を吐いたり、励まし合えばいい。
大学受験は、当たり前だけどクラスメイトはまだ誰も経験したことは無い。
人を蹴落とすことより、みんなと力を合わせた方がいいよね。
私達のクラスは、朝学習として、45分早く登校して英語の長文問題とか数学の大問題とか自分一人でやりたくない勉強をみんなでやることになった。
◇◇◇◇
「ごめんね、朝早くなるから、もう加藤君とは一緒の電車に乗れなくなるわ。」
朝の通学電車で友香先輩がとんでもないことを言う。
「そんな、僕も早く行こうと思ってたんです。弓道の朝練したくって。」
「そうなの?無理しなくていいよ。」
ふぅ、なんとか言い訳できた。
どうして諦められないんだろう。
どうして啓兄ちゃんより先に出会えなかったんだろう。
どうしてこんなに……。
友香先輩に手を伸ばしかけて、何十回引っ込めたことだろう。
僕が告白したら、友香先輩は困惑するだけ。
それなら今のままの先輩後輩の関係でいい。
よくあるシチュエーションだが、自分がなってみると本当にその通りだ。
「昨日ね、加藤君達一年生が練習してたの見たよ。」
知ってます。マドカ先輩とけんちゃん先輩もいましたよね。
友香先輩は道場に寄らずに帰っちゃったけど……。
「加藤君、とっても上手になったよ。ちょっとあきらが弓道してるみたいで、私ドキドキしたわ。従兄弟だと、やっぱり似てるね。」
ああ、啓兄ちゃんなんかに似てなければよかった。忌々しい。
「上手になったご褒美ってわけじゃないけど、コレあげる。」
「? 何ですか、この包み。」
「私が着ていたLLサイズの制服だよ。私、今は痩せて、桃華先輩にもらったLサイズ着てるの。加藤君、最近がっちりしてきて、背も伸びたみたいでしょ?私も後輩にあげよっかなって。迷惑?私のじゃ嫌?」
「ありがとうございます!いただきます。」
僕は素早く包みを鞄にしまった。
欲しかった部Tシャツよりもっといいものが手に入った。
さっそく着よう。
弓道頑張ってよかったけど、ますます友香先輩のこと、諦められなくなった……。
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