第56話 それぞれの戸惑い
近藤君サイド
最近、連の様子がおかしい。少し落ち込んでいたようで心配していたのに熱心に練習している。いいことだけど何があったのか。
「地区予選からずっと、小森は気合が入っているな。」
「はい、先生。」
「近藤、お前がチームを上手くまとめているってことか。」
「いえ、そんなことはありません。連が頑張っているだけです。」
連とオレは小学生の時のクラブチームのときからの仲間だ。
今でもダブルスを組むなら連とが一番相性がいい。なのに地区予選からずっと、連はよそよそしい。
М校は寮生活をしている。自由時間はいつもは卓球の雑誌を一緒に見たり、テレビをみんなで見たりしていたのに、連のやつスマホ使用可能時間はスマホばっかり触っている。
そんなやつじゃなかったのに地区予選でどっかの女子に声でもかけられたのか。
「連、卓球帝国の最新刊手に入れたけど、見るか?ダブルスの上達法特集してるぞ。」
「うん、あとでいいや。今スマホが忙しいから。」
「なぁ、明日のオフはインターハイの遠征に向けて買い出しにでも行かないか?」
「悪い、近ちゃん、ボク明日は約束があるから。」
「家族と会うのか?」
「誰だっていいだろ。ごめん、明日は一人で行きたいから。」
一体連に何があったのだろう。
今のところ害は無さそうだけどちょっと気になるな。
明日、後をつけてやろうか、いや…。
友香サイド
最近あきらの様子がおかしい。ラインの返信が今までよりもずっと遅いし、素っ気ない。
明日も急に予定が入ったからとデートをキャンセルされ、夕食のみご招待されている。
一体どういうことよ。もしかして片平さんか…。
私にはあきらのお母さんという強い味方(情報源)がいるのを忘れているようね。
明日どこへ行くのか、突き止めてやるから。
もし私を裏切っていたら、谷底とコンクリートはもちろん、その上にヨーロッパ風のお城を建てて女王陛下友香が成敗してくれるわ!!
金城サイド
「忙しいのにごめんね。遠征前にどうしても
「うん……一度戦っただけの僕でいいなら。でもラインで大分励ましたから、もう言うこと無いんだけど。」
「そんなこと言わないでさ、一回言ったことでもいいからもう一回言ってよ。」
連君、君って結構面倒なやつだったんだな……。
「わかったよ。連君のいいところは、どんなに追い詰められても(僕は追い詰めたことないけど、)サーブがキレッキレなんだよ。全然ビビってない感じがするよ。そして、冷静で落ち着いているように見える。普通は疲れてきて判断ミスしそうな時でも、絶対にその時一番いい判断をしていると思うんだ。」
「うんうん、それで。もっと言って。」
駅前のドーナツ屋さんで、当たり障りのない励まし言葉を延々と連君に掛けている店の外で、怪しい男女が店内を伺っているのに僕は気づかない。
「片平さんじゃなくて男友達ね。よかったけど、誰かしら。」
「連のやつ、友達に会いに来たのか。あいつ誰だっけ……確か、K校の金城か荒木のどっちかか?」
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