第46話 四月の電車は無法地帯 帰り
「友香先輩、一緒に帰りましょう。」
「いいよー。」
「友香、加藤君と仲良しだね。いいの、彼氏がいるのに。」
「エミ、加藤君は弟と同じ年だから弟みたいなもんよ。」
最近、通学電車の行き帰りを部活の後輩の加藤君と一緒に乗るようになった。
加藤君はわりと整った顔で、身長は私と同じか、少しだけ高いくらいで、メガネはしていないけど、なんとなくたまに、あきらに雰囲気が似てる感じがする。
そのせいか、ちょっと気になっているんだけど、加藤君は礼儀正しいし、なついてくれていて大事な後輩だ。生意気な弟の優斗よりよっぽど可愛い存在かな。
駅までは弓道の話や教科の話をしながら歩く。
「弟さんがいるんですか?」
「うん、高校は違うけど、加藤君と同じ学年だよ。」
「彼氏さんもいるんですね。」
「いるよ。弟の部活の先輩で同じ学年なの。学校違うからそんなに会えないけど。」
「どんな人なんですか?(まず敵のことを知らなくては。)」
「うーん、メガネで優しくてクラスで一番イケメンじゃないけど、地味にニ、三番目くらいにイケメンかな。ちょっとマニアックなところがあるけど。」
「そうなんですか。(よーし、メガネ以外、全部自分に当てはまってるじゃないか。)」
帰りの電車はそんなにぎゅうぎゅうではないから、体がくっつくことはない。
でも、その日はちょっと混んでいて、しかも次の駅で高校生がたくさん乗ってきた。
加藤君は私がつぶれないようにと、体がくっつかないように気を付けてくれる。 紳士的だな。
えっ、これって壁ドン変格活用、電車のドア付近ドンってやつじゃん。
ヤバッこの私があきら以外の人にそんなことされるなんて……。
あと、これが加藤君でなくてあきらだったら、超幸せ…。
そんなことを考えていたら顔がにやけていたと思う。
「友香先輩、これ以上押されたら、体がくっついちゃうかもしれませんが、ごめんなさい。」
「いや、そこはできれば耐えてちょうだい。そんなに加藤君とくっついてたら、一緒に電車乗れない。」
「(あんまり焦ってもダメだな。ここは引こう。)……はい。」
誓って無実ですが、まさかこの現場を片平さんに見られていようとは!!
そして、彼女に呪われていたとはうかつにも気付かなかった!
「見たわよ一色友香、金城君以外の男子といちゃついてるところを、この目でばっちりとね。金城君を誤解させて、まずは谷底へ突き落としてやるわ。できればさらに疑心暗鬼に陥らせてコンクリートで埋めてやる。そしてこじれたところへ築城するの。その城の主は私、片平マリナよ!ついでに金城君をゲットして領地も治めちゃうわよ!」
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