第99話 諦念

どうにもここは息苦しくていけない


新鮮な酸素を求めてはくはくと

拙い呼吸を繰り返してみても

吸い込むのはざらりとした粗い砂


苦しさから逃れるよう喉元に手を這わせ

なけなしの気道を確認してみても

その指が触れる皮膚のじとりとした感触


きっと逃げられない


そんなことを本能レベルで感知する


痺れる指先とか色を失う口唇とか

それらすべて妙に静かな面持ちで受け入れる


このまま奪われるのならば

せめて最後に爪を立て薄い皮を破り

流れる血のあたたかさ


包まれながら眠るのも悪くはなかろうと

ついにその目を閉じながらわずかに口角をあげた

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る