第94話 サヨナラ

ふわふわ揺れる灯り

やわらかな部屋の空気

笑いさざめく声と

懐かしいいくつもの影

その温かさがひどく

胸に刺さる気がして

そっと当てた掌を

染めるぬるい赤


サヨナラ


この場所を去ることが

こんなに痛いなんて

思ってもみなかった

いや、たぶん知らんぷりしてた


サヨナラ


流れ続ける赤は

腕をつたい体を流れ

やがて足下まで赤く染めて

でもそのぬくもりを

このまま抱いていくんだろう

きっと、いつまでも


サヨナラ

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