第10話  終わりの夏に

それはもうずっと前から

失い続けている日常

求めていたはずの灯りは

闇の底へと転がり落ちて

未来に繋がる道は

光に照らされることもない

ただそこはかとなく広がる

虚無だけが体を覆う

道端に転がるセミは

その生涯に何を見る

鮮烈な光と照り返す熱

その陰で静かに失われる命

最期に見える景色に

小さな命は何を思う

ただ強烈な夏だけが

魂の終わりを見送った

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