閑話 初給料の話(中編)
一体莉愛に何をプレゼントしたらいいのか……。
結局一人で考えていても何も思いつかなかった。
そこで次に大家さんに相談してみることにした。
大家さんに会いに行って適当なカフェに入る。
「俺にしかできない……。莉愛が恥ずかしいと思うようなプレゼントってなにが浮かびますか?」
それを聞いた瞬間に大家さんが身を乗り出して答えてくる。
「絶対結婚ですよ! それ以外考えられないですから」
「い、いや、でも幾ら何でも早すぎるぞ? だって莉愛はまだ高校生……」
「今は十六歳以上だと結婚できるんですよ。莉愛ちゃんはもう十六歳でしょ?」
言われて初めて理解する。
たしかにこれは俺にしかできないことで、直接言ったら莉愛が恥ずかしがりそうだ。
全て満たしていそうだ。
いやいや、でもそんなに簡単にプロポーズを?
そもそも俺たちはまだ付き合ってすらいないわけだし……。
そう考えるとさすがにプロポーズは早すぎると結論づけた。
「他にできそうなことはないですか?」
「うーん、私も莉愛ちゃんと有場さんのことを全て知ってるわけじゃないですからね。例えばペアのものを買ったりとか、莉愛ちゃんがして欲しいことをしてあげるとか……」
ペアのものか……。一応持ってるからな……。
となると、莉愛がしてほしいことか……。
「そういえば有場さんって莉愛ちゃんとどこまで行ったんですか? 普通に手をつながれたりはしてましたけど、キスくらいはしたんですか?」
突然はっきり言われて俺は一瞬焦ってしまう。
「い、いや、そんなことは――」
「なるほどね。それなら有場さんからしてみるのも手……かもしれないですね。ただ、それはどこかの記念日に取っておくのも良いかもしれないですけど」
大家さんには嬉しそうににやりと微笑んでいた。
なんだか参考になったようななっていないような……。
なんとも言えない気持ちに襲われた俺はそのまま町の方へ買い物に出かけていた。
そこであるものを発見する。
「ペアリングか……」
これなら莉愛も喜んでくれそうでなおかつ値段もまだ控えめに出来そうか……。
上を見たらきりがないが。
「よし、これにするか……」
良いかもしれないとそのまま店の中に入る。
◇
数分後、俺は店の外でうな垂れていた。
「まさか指のサイズを聞かれるなんて……」
今まで禄につけたことがなかった俺は店員にサイズを聞かれて固まってしまった。
さすがにこうなると莉愛と一緒に買いに来るしかなさそうだ。
一応、一緒に来ていただければサイズもお計りしますと店員から聞いているので、せっかくだから次の休み、莉愛と出かける約束をつけてみるか。
◇
家に帰って来るなり、俺は莉愛の部屋を訪れていた。
「莉愛、少し良いか?」
「あ、有場さん!? ちょっとだけ待ってもらっても良いですか?」
莉愛が少し慌てた様子を見せていた。
一体どうしたのだろうか?
少し不思議に思いながら俺は部屋の前で待つ。
すると、ゆっくり扉が開き、中から莉愛が顔だけ出していた。
「有場さん、どうぞ……」
顔を真っ赤にして、恥ずかしそうにしている莉愛。
そんな莉愛に促されるまま俺は莉愛の部屋に入っていく。
「そ、それで有場さん、どうかされましたか?」
カーペットの上に座るとそわそわした様子の莉愛が聞いてくる。
「いや、俺自身は対したようじゃないんだが、莉愛の方がどうしたんだ? なんだか落ち着きがないようだが?」
「そ、そんなことないですよ。わ、私はべ、別に普通です……。そこで大家さんに会ったりしていませんから!」
つまり、大家さんに余計なことを吹き込まれたのか。
俺は大きくため息を吐くと莉愛の目を見て言う。
「せっかくだから今度の休み、俺と一緒に買い物に行かないか?」
「えっと、……あれっ?」
莉愛が一瞬不思議そうな表情をする。
「か、買い物、いいですよね、買い物。一緒に行きましょう!」
何かを取り繕うように早口で言ってくる。
まぁこれ以上深く聞くのも野暮だろうし、莉愛の態度は突っ込まないようにする。
「それで何を買われるのですか?」
「あぁ、初給料だったからな。何か思い出に残るものが欲しいなと思って、指輪を買おうと思うんだ。莉愛とおそろいのものを……」
すると莉愛に表情が固まり、そして、だんだんと赤らめていく。
「ゆ、ゆ、指輪ですか!?」
「嫌だったか? それなら別の……」
「い、いえ、そんなことありません。有場さんから指輪をもらえるなんてこれ以上の幸せはありません!」
力強く言い切ってくる。
その態度を少し不審に思いながらも俺は莉愛が喜んでくれそうでよかったと思った。
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