こどもたちは海に還る

作者 不破有紀

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★★★ Excellent!!!

 この物語に登場する人魚は、言葉を持たない。海へと還った彼女らが歌う詩は、はたして何を意味するのか。

 人間は言葉を生み出し、それを伝え受け継ぐことで叡智を手にし、繁栄した。
かつて海から陸へ上がった我々の祖先。そして人間となった今、宇宙へとその視点は向いている。言葉により築かれた文明と共に生きる我々は、もしかしたら海にいた時、言葉を持たなかった時に持っていた何かを忘れているのかも知れない。

 世代交代しながら紡がれる壮大な海洋ロマン。登場人物の繊細な心の機微が丁寧に描かれたドラマでもあります。是非ご一読あれ!

★★★ Excellent!!!

子どもたちの、四人に一人が人魚として生まれる近未来。
しかし、遺伝的に同一にもかかわらず、人間と人魚は、生態も言葉も違い、心を交わすことはできなかった。

そんな背景を持つ世界で、妹が人魚として生まれた少女を主人公として、第一章が始まります。
家族でありながら、一緒に暮らすことが出来ない。血を分けた親子や兄弟でありながら、心を交わすことができない。

優れたSFは、SFをギミックとして、皆が当たり前だと思っている価値観を揺さぶり、新たな問題を投げかけます。
本作は、人魚のいる世界を舞台として、コミュニケーションの本質について問いかけます。あなたは、この問に、どう答えますでしょうか?

また、本作は、わずか5万文字に、壮大な世界を縦横無尽に駆け回るストーリーが、詰め込まれています。
小説を書いている人は「たった5万文字で、ここまで書けるのか!」と、驚くこと間違いなしです。