第17話 今時、暴走族って、それはないわ

『理沙視点』


「アニキ、アイツらですか。

 今回の獲物わ、グヒヒヒィィイ」


「ああ、間違いねぇ。

 姫川財団のご令嬢さまの他にも、資産家のご令嬢がたくさんいやがるぜ。

 ウヒャシャシャァアア」


「これで俺たちも億万長者の仲間入りですね」


「ああ、そうだ。

 毎日遊んで暮らせるってもんだぜ」


 耳障りなバイク音と車のクラクションが鳴り響いて。


 駐車場に雪崩なだれ込んできた暴走族はバイクから飛びおり、車から飛び出し、急に襲いかかってきたわ。


「な、なんの、アナタた……」


「うっせえ、どけ。邪魔だ」


 女教師はあっさりと倒され、昏睡してしまう。


「きゃあっ!?

 緑川先生がっ!?」


「えっ、これから私たちどうなっちゃうの?」


「イヤイヤイヤァアアア。

 ち、近寄ってこないでください。

 お、お金が欲しいなら、パパにお願いしますから。

 暴力だけは振るわないで、く、ください……お、お願いします」


 そして私たちはすべもなくガラのワルイ男たちに取り囲まれてしまう。


「話がはやくて助かる……ぶはぁ!?」


「よくもアニキをやっ……ぐは……」


 ……ということには、ならなかったわ。


 虫の居所が悪かった跳姫さんによって、特攻服や黒い革ジャン、革パンツに身を固めた暴走族の人たちは一瞬にしてボコボコにされてしまったからよ。


 こびりついた血を指で拭って、軽く舐める。


 その妖艶で萌えるしぐさに、思わずドキとしてしまう。


 そして井上さんと斎藤さんが縄で男たちを拘束していくわ。


「こんな化け物じみた女子高生がいるなんて聞いてねえぞ」


「アニキ、もしかしてあの娘って『銀浪院組ぎんろういんぐみ』の組長さんの娘さんじゃないですか。

 あの特徴的な白銀の髪と目元を覆い隠す真っ白な包帯に、漆黒のゴズロリ衣装。

 さらにカラダの至る所に巻かれた包帯のしたには……」


 それ以上、男が言葉を口にすることは、2度となかった。


 跳姫さんの右手に巻かれて包帯が男の口を封じたのだ。


「死にたくなければ、とっとと、うせろっ!?」


 ガラの悪い男たちは、蜘蛛の子を散らすように逃げていってしまう。


「逃がしてしまってよかったんですか? 姫川さん」


 斎藤さんが聞いてきたわ


「まあ、問題はないんじゃないかしら?」


 そして私たちはバスに乗り込み、帰路に着きました。




++++++++++++++++++++++




 姫川家が所有するお屋敷、神村龍一の部屋。


 はだけた掛け布団にしがみつくようにして、龍一は乱れた寝相をさらしていたわぁ。

 

「あ~あ、ほんとよく寝ちゃってるわねぇ。

 でも大きなケガも病気もなくて……本当に良かったわぁ」 


 無防備な寝顔に自然と笑みが浮かび、私は寝癖のついた髪を優しく撫でる。


 寝台の傍らに膝をつき、間近で耳元に呼びかけるが、起きる気配はまるでなかったわぁ。


 イタズラ心に火が付き、彼の頬を軽く突いてみたが起きる様子はなかったので、今度は油性ペンを使っておでこに『肉』と落書きをしてみた。


 ちなみに某少年マンガで連載していた『超人プロレス』モノとは一切関係ありません。


「そろそろ起きてくれないと、私……。

 帰るに帰れないんだけど……ねぇ、聞こえてる」


 ここで何も言わず勝手に帰ってしまったら『薄情な彼女』だと思われてしまうわぁ。


 こちらに背中を向けて横向きに寝る彼の肩を掴んで揺さぶった。



 

++++++++++++++++++++++++




『龍一視点』


 気がつくと俺は自室のベッドの上で寝ていた。


 目を覚ました直前は、意識がはっきりしなかったが、かすかに鼻をくすぐる甘い芳香(ほうこう)に目覚めをうながされ、ゆっくり身を起こす。


「もう急に倒れちゃんだもん。ビックリしたんだからね」


 心配する理沙の声が聞こえてきた。


 俺のことを心から案じるのが伝わってくるような、真摯な表情。


 汗でピッタリと肌に張りついたシャツが、彼女の美しいボディーラインを描き出し、健康的な地肌の色と水色のブラが薄っすらと透けて見え。


 お椀の美しい形をくっきり浮かび上がらせている。


 くびれた腰からの女性的な丸みを帯びたヒップラインをピチッと食い込む黒いスパッツに、ムチムチの真っ白な太もも。


 長い時間走ったことで、清楚な白いハイソックスがずれ落ちている。


「もしかして、ずっと付き添ってくれていたのか」


 いつもは見せないような優しい笑顔を浮かべて


「当たり前じゃない、彼女なんだから」


 その笑顔を見た途端。


 俺の心臓がどくんと跳ねた。


 理沙の笑顔はとても可愛らしかった。


 少し恥ずかしそうに、はにかんでふわりと微笑む彼女は、掛け値なしに可愛かった。


 その笑みは値千金。太陽よれも癒される。


 目もくらむような美人だ。


「お腹空いてるのでしょ、龍一。

 はい、リンゴ。

 やっぱりお見舞いと言えば『リンゴ』よねぇ。

 ホラ、口開けて……あ~んって……」


 キレイに皮をむかれたリンゴをフォークで刺して、差し出してきた。


 また『リンゴ』は秋の味覚として知られ、世界中で栽培されているフルーツだ。 

 

 あとリンゴと言えば『ニュートン』だな。


 リンゴが木から落ちるのを見て発見したとされるのが『万有引力の法則』だぜ。


 それからリンゴと言えば『ヴィーナス』の象徴的な食べ物だ。


 これはリンゴを縦に割ると、中の種の入っている部分が『女性器の形』に似ているからだ。


 ちなみに『アワビ』に例えられることもある。


「うん。

 めっちゃっくっちゃ、美味しよ。

 理沙のむいてくれたリンゴ。

 ありがとうな」


「ほらほら、病人は布団から出ないのぉ」


 これ以上、理沙に心配をかけるわけにもいかず、病人らしくおとなしく寝ることにした。


 ちなみに優勝したのは『木村 楓』という女性で、露天風呂から見た景観を描いたモノだった。


 知人の木村に『義理の妹』がいたことには、正直驚いたな。

 

 容姿は、真紅の髪にベレー帽を被った『ザ・画家』という風貌だ。


 その上、貞淑で大人しく、知的な趣味を持っているのだ。

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