第7話 夢の印税生活が送りたいよ……とほほほっ.
「大丈夫ですか? お婆さん。向こうまで渡られるんですか?」
それは信号のない横断歩道で、立ち往生していた。
「あ、はい……そうなんですけど、ちょっとタイミングが……」
カラダに似合わず大きな風呂敷を抱えていた。
俺は臆病者で、ボッチで、人見知りだけど……両親によく『お年寄りには優しくする』ようにと、言われて育ったから。
「なら、横断道路を渡られてはいかがですか? お荷物は俺が責任を持ってお持ちしますので」
「ありがとうございます。
お言葉に甘えさせてもらいます」
「困ったときはお互い様ですから、お気になさらないでください」
想像していたよりも遥かに重かったが、男としてのプライドを守るためにも弱音を吐くわけにはいかなかった。
「どちらまでお運びしますか」
「○○駅までお願いできるかしら」
ここから距離にしておよそ17メートル程度。
そこから、お婆さんは電車に乗るらしいな。
「わかりました」
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「どうもご親切にありがとうございました。
これはほんのお礼です」
風呂敷からリンゴを1つ取り出し。
手渡してれた。
「ありがとうございます。
お気を付けて」
改札口の前でお婆さんを見送った後。
いただいたリンゴをシャリっと噛み。
溢れた果汁で、濡れた
「美味いな」
人助けの報酬としては十分だな。
ボランティア活動などの奉仕活動は、大嫌いだけどな。
手が汚れるし、汗を搔くし、服だって汚れる。
だいたい『社会貢献』という言葉が嫌いなんだ。
なんだか? 偽善者になったみたいで、胸糞悪くなるんだよな。
誰も見てないところで、こっそりと人助けをしているほうが、性に合ってる。
逆に理沙は、生徒会主催のボランティア活動によく参加しているみたいで、先生たちの評価もめっちゃくっちゃ高い。
猫かぶりが本当に上手いからな。
俺も見習うべきなのかもしれないけど……他人の評価とか基本気にしないタイプだからな。
目立つのもあまり好きじゃないしな。
でも女高生が汗水流しながらボランティア活動に精を出している姿を、遠くから見るのは好きだな。
一緒にやりたいとは思わないけどね。
あくまでも遠目から見ているのが好きなんだよな。
女の子同士がイチャついている姿を見るなら、やっぱり遠目に限る。
近づきすぎるとロクなことにならないからな。
さてと行きつけのジャンクショップ(何でも屋)にでも行って、時間でも潰すかな。
もしかしたら『お宝』と出会えるかもしれないしな。
早くベストセラー作家になりたいな。
夢の印税生活が送りたいよ……とほほほっ.
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休日。
公園のベンチで出来事。
今日の理沙の服装は、涼しげなブラウスに水色のカーディガンを羽織り、プリーツスカートも同系色で統一されているな。
理沙はスタイルがいいから、何を着ても似合うな。
そしてジョギングコースを走る。
ヘソ出しのブラトップとショーツという陸上部の試合用ユニフォームを着た名前もしならない少女の姿が目に入った。
赤いスポーツウェアは、かすかな胸のふくらみがハッキリとわかるくらいに肌に密着していて、ぶっちゃけ全裸と大差とないな。
「セパレートタイプの陸上着ってなんか? エロいよな。
コンマ単位でも速く走れるためらしいけど、間近で見るとやっぱりエロいよな。
キュートなおへそに、むっちりとした太もも。セクシーなお尻と揺れる胸。
特に『高跳び』してる姿は、下半身にくるものがあるな」
「躍動するカラダ、飛び散る汗、上気した顔がエロいというのは、同意するわぁ。
汗が染み込んだ『リストバンド』とか『タオル』とか『スポーツシューズ』とか、思わず匂いを嗅ぎたくなっちゃうわよねぇ。
でも高跳びよりも私は『やり投げ』してる姿が好きだわぁ」
「やり投げってエロか? ゴメン、俺にはわからないな。
やっぱり高跳びの方が断然エロいと思うな」
「マンモスに向かっていた原始的な勇ましさが好きなのよぉ。
大人の雰囲気を滲ませる女性。
高跳びにはそれがないでしょう」
「やり投げ=マンモスという構図がよくわからないな。
なんでそこにエロさを感じるのかも理解できないし、理解するつもりもないな
背面跳びのエロさを口で説明するのは、難しいだけど。
あれ以上に芸術的で『絵』になる飛び方はない。
それだけは断然できる」
「今の説明だけじゃ、いまいち高跳びの魅力が伝わってこなかったわ。
でもこのまま話し合っても平行線を辿るだけよね」
少しツンツンした雰囲気の声。
俺のことを鋭い目つきで、じっと見つめてきた。
背筋に冷たいモノが走る。
明らかに理沙はイラついていた。
なんでも自分の思い通りにしないと気が済まないお嬢様キャラなのだ。
でも蔑む視線ってゾクゾクするかも。
とくに美人に軽蔑されると男としての尊厳を踏みにじられる感じがして、Mな部分がグリグリと刺激してくるな。
「確かにな、これ以上の話し合いは無意味だな。
だが陸上競技がエロいということは、この話し合いで理解を深めることができた」
「根拠のない自信ほど恐ろしいモノはないわねぇ。
でも高跳びに対する考え方が、少しだけわかったのも事実ね」
ドスの利いた声が響いた。
これ以上彼女の機嫌を損ねないように発言は気をつけたつもりなんだけど……皮肉を言われてしまい。
「俺もやり投げというものに、少しだけ興味が湧いたな」
俺は乾いた笑みを浮かべたまま、心にもないことを口にした。
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