第4話 真愛美ちゃんとの親睦イベント???
二十畳はあるんじゃないかってほど広い畳敷きの和室が、俺に割り当てられた部屋だった。
ちなみ右隣が娘のレイの部屋だ。
高そうな和の机に桐ダンス。
押入れフスマにはド派手な
なんだか落ち着かない気持ちになった。
場違いな気がしたからだ。
とは、他に行く当てもないのだから、俺は手荷物を畳の上におろし。
鞄からノート型パソコンを取り出しと、小説を書き始めたが……。
どうしても真愛美ちゃんのことが気になって、集中できなかった。
壁のようなモノを感じたからだ。
慕ってくれるヒトはたくさんいるはずなのに、誰に対してもほどほどの付き合いに留めておいて、特別親しい友人を作らないでいるようにみえた。
『1階の右奥の部屋だけは絶対に入っちゃダメだからね』
真愛美ちゃんの言葉が脳裏をよぎり、気が付くと俺はその部屋の前に立っていた。
「やっぱり来たのね、クロネコ。
ちょっと手伝ってほしいことがあるの」
「小学生じみたイタズラとか仕掛けてないよな」
「妾がそんな子供じみたことするわけないでしょう。
へんな心配してないで、早く入ってきなさい」
ドアの向こうからお呼びがかかり、部屋に入る。
「ふふふ、どうかしら?」
むき出しの美しい背中が向いていた。
少し栗色がかった長いストレートの髪は、シュシュでキレイに纏められ。
形のいい引き締まったヒップを、セクシーな黒のレースの下着が包んでいる。
ベッドの上には、無造作に脱ぎ捨てられたメイド服が置いてあった。
「真愛美ちゃんもヒトが悪いな!?
こんなドッキリを仕掛けてくるなんて。
用が済んだのなら、もういいかな?
部屋に帰っても」
「その妙に冷静な物言いが気に入らないわね。
せっかくだから、マッサージでもらおうかしら」
召使いに言うように言い放ち。
真愛美ちゃんが振り向くと、慎まし気な胸が視界に飛び込んできた。
ちゃんとブラはしているみたいだな。
鮮やかな刺繍がセクシーなブラジャー。
それを見て、どこかホッとしている自分がいる。
「ほら、早くしなさい」
いつの間にか真愛美ちゃんはベッドの上でうつぶせになって寝ていた。
シミ一つない本当にスベスベしてキレイな背中だった。
「はい」
元気よく返事をすると、俺もベッドの上にあがる。
真愛美ちゃんの腰上に跨り、膝を曲げて肩を揉む。
俺はひと目見ただけで、凝り具合がわかる。
「ああっ!? いいわぁ~~~。
とてもいいわぁ……」
俺が肩のツボを刺激するために、彼女は息が弾む。
「小説家よりもマッサージ師の方が向いてるんじゃないかしら。
妾専用のマッサージ師として雇ってあげてもいいわよ」
「それはとてもありがたい話だと思いますけど。
お断りさせてもらいます」
「あら、そうなの。
残念だわ。
でも、気が変わったら……
キャハハハ……ちょっと、やめなさいよ。くすぐったいわよ……キャハハハ……や、やめなさいよ」
お仕置きのように背中のツボへ親指をめり込ませると、真愛美ちゃんの脚が跳ねた。
さらに脇の下もくすぐる。
「いいかげんにしなさいよ」
「すみません。
あまりにもしつこかったので、つい」
さすがにこれ以上はマズイと思い、弁明の言葉を口にする。
「つい、じゃない……わよ……まったく……」
ぐったりと枕に顔をうずめ、はーはーと息を荒げ、艶美によだれまで垂らしている真愛美ちゃん。
「マッサージはもういいわ!?
着替えるから部屋を出っていて頂戴」
「また、何かあったら、気兼ねなく呼んでください。
俺、真愛美ちゃんともっと仲良くなりたいってキモチはありますから」
「妾は馴れあうつもりはないわよ。
とっとと部屋から出ていけ」
俺は部屋から追い出されてしまう。
++++++++++++++++++++++
続いて訪れたのは『書斎』だった。
小説を書くうえで……何か? 資料になる本はないかなと思い本棚を見渡す。
部屋の左右には古い木の棚が並んでおり、片方の棚には『古めかしい書物』がびっしりと並べられている。
もう片方の棚には『漫画』や『ライトノベル』と真新しい書物がびっしりと並べてられていた。
一番上の棚かにある緑色のブックカバーの本を取ろうしているレイの姿が視界に入る。
タイトルは『セロから始める
「はい、レイ。
これが読みたかったんだよね」
「あっ! パパ、ありがとう」
「どういたしまして」
「やっぱり紙の本っていいね。
わたしぃ好きだよ。
パパも好きだよね」
「ああ、好きだよ。
まさに読書しているって、感じがするからな」
「なにそれ……でもまあ、パパらしい答えかな」
「じゃあ、レイはなんで紙の本が好きなんだ」
「それは秘密。
教えてあげない」
「なんでだよ」
「女の子の秘密をあれこれと詮索するのは、デリカシーに欠けると思うのよね」
「そういうものなのか」
「だからパパは、女心がわかってないって言われちゃうのよ。
パパだって、あれこれ詮索されるのは嫌でしょう」
「確かにレイの言ってることは、一理あるかもしれないな」
「早くこの本を読みたいから。
わたしぃはもう行くね。
じゃあ、パパ」
「ああ」
俺が頷くと、レイは去っていてしまう。
俺も資料になりそうな本を2、3冊見繕うって自室に戻る。
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