第16話 最終回
数分後、ふと太一は気が付く。今まで何をしていたのだろうか。必死に思い出していた。
「たしか、あのあとは……。」
そんなとき、部屋の扉が開き誰かが入ってくる。
「お待たせしたウォーン」
「競技再開だウォーン!」
狼娘達だ。闘技場では1度も喋っていないのだが、太一には何故だか懐かしい声だった。他の7人も次々に目を覚ます。太一と同じ不思議な感覚になるが、ぱふぱふのことは遠い昔のように感じていた。
「あの、ギガン。競技って?」
太一にギガンと呼ばれた狼娘の1人は驚いた。何故、自分の名を知っているのだろうかと、頭をひねるギガンに対して、他の3人は慌てずに話を進める。
「ドッグファイトに決まってるウォーン」
「早く支度をして欲しいウォーン!」
「勝てば、本当の異世界に行けるかも知れないウォーン!」
「分かったよ。ベネネ、カヌレ、タルペ。急かさないで!」
ギガン、ベネネ、カヌレ、タルペ。4人が白い部屋に入ってきたときから、太一はこの4人の名を前から知っているようなつもりになっていた。そして、名乗りもしない4人の名を知っているのは、太一だけではないようだ。
「もしかして、私達。本当に……。」
「いや。あり得ないわ!」
あおいは腕時計型の端末に表示された時刻を見て、心配そうなあゆみに言った。
「じゃあ、白昼夢ってやつ?」
「それなら、充分に考えられるけど……。」
あおいもアイリスの言うことにははっきりとは否定しない。8人が同じ夢を見ることなんてあるものだろうかという疑問は残るが。
「ま、夢オチってやつっしょ!」
まことは1本とったといった感じで得意そうにベネネに向かって言う。だが、ベネネにもっと上手く言い返された。
「落ちるのはこれからだウォーン!」
「なるべく派手にお願いするウォーン!」
「観衆が待ちわびているウォーン!」
カヌレ、タルペがつれなくあしらう。時間がないのだ。仕方がない。太一達は走って闘技場へ向かう。
太一達を走らせておいて、狼娘4人はその場に残り、水がたっぷり入ったウオーターサーバーを片付ける。
「どうして彼等は知ってるウォーン?」
「きっと神話の読み過ぎだウォーン!」
「その線は有力だウォーン!」
「それより、媚薬を片付けるウォーン!」
不思議そうに耳を垂れるギガンを他の3人が3本の尻尾をパタパタしながら励ます。
太一達御一行は、釈然としない中、闘技場に戻った。そこには、作りものの異世界があった。何となくホッとする太一達御一行。
程なく、ドッグファイトが再開される。結局、勝ったのはアイリス。4つ脚では落ちようがない。太一は最後まで生き残るが、あえなく敗れ去り、観客を沸かせるような落ち方を見せた。
再び白い部屋に通された太一達御一行。そのときには、異世界へ転移するようなことはなかった。こうして、太一達の『東京異世界ランド』での楽しい異世界生活は終わった。
異世界編 世界三大〇〇 @yuutakunn0031
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