第7話 ぱふぱふ
「ぱふぱふよ……。」
ぱふぱふとは、『異世界ウオッチ』に描かれている、女性のおっぱいの谷間に顔を埋める行為。アイリスの説明によると、覚醒した僧侶によってお尻を突かれた他のメンバーは、自ら僧侶にぱふぱふの提供を申し入れるのだという。最後にはミノタウロスもそうする。
「そ、そんなこと、できるわけないじゃない!」
「そうだよ。あおいやしいかには無理だよ」
できるわけがない。やってやるもんかという意味にも不可能だという意味にも取れる。あおいは前者のつもりで言ったのだが、まりえには後者に聞こえた。まことはそれが分かっていて、あえてまりえに乗っかる。
「ま、Cならギリセーフっしょ」
「ちがーう! あってもなくても、やりたかないわよ!」
このときになってあおいははじめて貧乳であることを呪った。自分の発言には、どうにも説得力がない。少しは良識のあるあゆみにすがる。
「ねぇ、アイリス。それって、パレードが終わったあとなんでしょう」
「ええ。直後のことなの。飲み物に何か混ぜてあったみたい」
「じゃあ、みんなの前で?」
「いいえ。ドッグファイトまでは観衆の前だけど……。」
アイリスはそこまで言ってから、一度呼吸を整えてから続ける。
「……ぱふぱふは、主人公御一行以外には誰もいない密室での出来事よ」
「だったら問題ないよ!」
「あーるぅーって! 大問題よ!」
まりえは太一にぱふぱふする気満々のようだ。
「でも、いつかはマスターとぱふぱふするんだろうし」
「ま、他に誰もいないんだったら良いっしょ!」
悪貨、良貨を駆逐する。朱に交われば赤くなる。太一にぱふぱふをすることに何の抵抗もないまりえが悪貨だとは言わないが、引っ張られるようにして、いつの間にかまことやあゆみ、しいかまでがその気になる。あおいは孤立する。『異世界ウオッチ』の中ではぱふぱふは恐ろしいものとして描かれていたから、アイリスだけは最後まであおいの味方だった。1番ぱふぱふし易い体型ではあるが。
「とりあえず、ドッグファイトのあとに振舞われたものは口にしないようにしましょう!」
直後に太一と優姫が戻る。手にしていたのはお約束の骨付き肉と堅いパン。シチューのようなとろとろのスープ。木目調のスプーン。赤ワインのようなグレープジュース。目を見張るような豪華な昼食だ。
「ま、優姫が一緒ならこんなもんっしょ!」
言いながらまことは1番美味しそうな骨つき肉をあおいに渡す。あおいは機嫌を直し、与えられた肉を食べる。皆もいただきますして、美味しく食べる。
パレードのあとの振る舞いについて、アイリス達は大切なことを太一と優姫には伝達し忘れてしまう。
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