三章 クリーチャー 2—4
研究室の奥に通じる三つのハッチ。
あの向こうには、ドクもつれていってくれなかった。秘密が隠されているからだろうか?
ジェイドは考えた。
「ドアが三つに人間が三人。手わけして調べようか」
「たまには意見が一致するな」
横柄なEDの答え。
「言いかたがムカつくなぁ」
言いあいながら、研究室へしのびこむ。
ラボの明かりは落とされていた。
だが、機器には電気が通っている。ほのかに明るい。
サポーターは壁ぎわにならんで、調整機におさまっている。
ジェイドたちは奥のハッチの前へ、まっすぐ歩いていった。
「あかないな」
とうぜん、ハッチはロックされている。ハッチのよこには、IDカードか、キーカードをさしこむ挿入口があった。
(カード……ID認識のキーカードか)
ジェイドはポケットに手をつっこんだ。ポケットには、エヴァンのベースキャンプをあけた、あのキーカードが入っている。
EDも同じことを考えたらしい。
同時にカードをとりだして、ちょっと、にらみあった。
「気があうね」
ジェイドがニヤリと笑うと、EDは不愉快そうな顔をした。
「あれ? あけないの? なら、おれが」
ジェイドがキーカードをさしこむと、ハッチはひらいた。
「やったな。じゃあ、とりあえず下見ってことで、三十分後にここで落ちあうってのはどうだ? 怪しいものを見つけたら、あらためて三人で調べよう」
「きさまの命令に従う気はない」と言いながら、EDは左端のハッチを自分のカードでひらき、入っていった。
ジェイドは、たったいまあけた、まんなかのハッチを自動でしまらないよう手で押さえる。
「パール、ここをたのむ。おれは右端に行ってみる」
カードをぬきとりながら言う。
「いいけど、なかから、あけるときにもキーカードがいるんじゃない?」
「おれが右端、調べて戻ってきたら、外からここをあけるよ」
「そうね」
パールがジェイドに代わって、ハッチを押さえる。
ジェイドは右端のハッチの前に移動した。
「パール。三十分後に」
うなずきあって、なかへ入った。
ハッチのなかは薄暗かった。
赤外線スコープに切りかえる。
視界が赤く染まり、あたりを見渡せるようになる。
そこは動力室のようだ。
ソーラーシステムの発電機が、まんなかに居座っている。
ほかにも、地下水をくみあげるポンプや、くみあげた水を建物内に供給するパイプ、空調機、セキュリティシステムなどが目につく。
施設としては大切な心臓部だが、犯人を確定する手がかりには結びつきそうにない。
ひとつ気になったのは、四角い部屋のすみにある、ガラスの筒だ。なかに反重力ボードが浮かんでいる。エレベーターだ。
エレベーターに乗っていったさきに何かがあるかもしれない。
ジェイドはエレベーターに歩みよった。上下のボタンが一個ずつ、筒の外についている。上のボタンを押すと、ガラスのドアがスライドした。内部に操縦パネル的なものは何もない。
ジェイドが反重力ボードに乗ると、自動で動いた。まっすぐ上昇していく。かなりの距離だ。時間にすると、ほんの数秒だが、距離で言えば百メートルは上がっただろう。
ガラスの筒の向こうに見えるのは岩壁ばかりだ。地上から地下へ、ずどんとボーリングしてあけた穴みたいな構造だ。どうやら、地上まで直通らしい。
やがて、反重力ボードが停止した。
出口のガラスドアが開閉する。
超合金張りのせまい室内。
だが、なんとなく空気でわかる。
この外は地上なのだ。
ジェイドは無造作に置かれた、さまざまな用具のあいだを通り、向こうに見えるハッチのほうへ向かった。
ここでも、エヴァンのキーカードが役に立つ。ハッチがひらいた。
明るい星空。
赤外線スコープの赤い視野に、外の景色が映った。
(なんだ。これ——)
ジェイドは愕然とした。
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