第61話 おうち

 吾輩はネコである。

 名前はちび太。



「ちび太、久しぶりにお前のおうちが出てきたぞー。ほら、猫ハウス猫ハウス」


 そう言ってご主人様が引っ張り出してきたのは、その昔、吾輩のためにとヨドバシ〇ドット・コムで買ってくれた猫ハウスだった。


 なんとなく肌触りが気に入らず、まったく利用しなかったためにご主人様がしょんぼりしてしまった、いわくつきの物件なのだが、


「押入れ片づけてたら懐かしいのが出てきてさ。もしかしたら今度は気にいるかもしれない、どうだ?」


 そう言ってベッドで丸くなっていた吾輩の前におかれた猫ハウス(中古・ほぼ未使用)。


 吾輩は飼い猫の最低限の礼儀として、ご主人様の顔を立てるべく軽く中に入ってみると、


「ちび太が入った……!」


 ご主人様のテンションがぐぐっとあがる。


「写真だ、写真を撮らないと……! あ……」


 しかし、わくわくしてデジカメを取りに行ったご主人様をよそに、スッと外に出て再びベッドの上で丸くなって眠りに入る吾輩だった。


 好みでないものはやはり、好みでないのである。

 猫とはそういう、自分の感性を何より大事に生きる生き物なのであるからして。

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