第40話:喋らなかったら魔王様に幹部だということを忘れられた……辛い

 わしの名はライ蔵……古くより前魔王様にお仕えし、序列三位に君臨した獣王だ。


「お前喋ると可愛くないな」


 新しい魔王様に代わってすぐに、こう言われた。

 それから頑なにその指示を守ってきた。

 その結果、ただの獅子の置物になってしまった。


「…………」

「あっ、ライ蔵殿いらっしゃったんですね」


 しばしば行動を共にする絶倫ですらこの有様だ。

 そして、有事の際に呼ばれる事も殆ど無い。

 肉食獣が戦ってもなんの面白みもないし、イメージが崩れるとのことだ。

 魔王様は獣王にどのようなイメージを持たれているのだろうか?


 そして極めつけが先の模擬戦だ。

 会議の場で魔王様が唐突に我らに強さを問われた。

 それから、2回指を鳴らされると幹部の面々が酷く憔悴しきっており、魔王様がそれを見てケタケタと笑っておられた。


 その後絶倫他のメンバーに子細を聞いて理解はいったが、納得はいかなかった。

 わしと戦っても、本気が出せないとのお言葉であったが、わしは根っからの戦闘民族。

 わしから闘いをとったら何も残らぬ。


「おい、ライ蔵難しい顔してんなー。やめろやめろ! 可愛くないから」


 考え事をしてたら、通り掛かった魔王様に鬣をワシャワシャされた。

 とても、気持ちいい。

 そうではない!


「どうした? 悩み事か? 考えるのなんてやめちまえ! 剥げるぞ!」

「いえ、魔王軍にとってわしは……魔王様にとってわしはなんなのだろうかと」

「そりゃマスコットだろ? 今度一緒に町の学校に授業しに行こうぜ」


 解せぬ。

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