◆その851 オリハルコンズの招集1
◇◆◇ 法王国 ホーリーキャッスル内 ◆◇◆
会議室に呼ばれたオリハルコンズメンバーの面々。
エメリー、アリス、ラッツ、ハン、キッカ。
そこには先んじて会議室の椅子に座る存在がいた。
「あ、来ましたっ!」
立ち上がるメアリィとクレア。
エメリーたちを招き入れるように小さく手を振る。
アリスは嬉しそうにメアリィの下へと向かう。
「メアリィさん、クレアさん、広場にはいらっしゃらなかったので、気になってはいたんです」
アリスの疑問にメアリィが答える。
「シェルフ族長の孫という事もあって、今回の件は族長から既に話を受けてたんです。なので、広場に行く必要がなかったんです」
「あー、そういう事だったんですね」
「でも、久しぶりにオリハルコンズが動けますねっ!」
メアリィは目を輝かせながら、弾んだ声を零す。
「まだ誰もいないのか」
会議室に通されはしたものの、待っていたのはオリハルコンズのメンバーのみ。ラッツは腰掛けながら腕を組む。
すると、クレアが補足するように言った。
「あ、先程までレミリアさんもいらっしゃったんですが、ナタリーさんに呼ばれたようで、今は席を外してらっしゃいます」
「ふむ、他の護衛者もいないようだが?」
「剣神イヅナ殿、剣鬼オベイル殿は別途任務があるようでこちらに呼ばれていないようです」
「別の任務、か。おそらく哨戒任務だろうな。彼ら程の実力者なら、遠巻きに我々を守る方が適している」
ラッツの言葉を受け、ハンが椅子の背もたれにぐっと背を預ける。
「益々大げさな話だな」
すると、キッカがハンの前にずいと人差し指を置いて言った。
「なーに言ってんの、絶対に失敗が許されないから世界はこんなにも気を遣ってるんでしょうが」
「いやまぁ、確かにそうなんだけど、護衛対象がウチのメンバーだしなぁ……」
「アンタ、一人でアリスを守れると思ってるの?」
「そ、そんな訳ねぇだろ」
「何よ情けない。『たとえ一人だろうとも守ってやるよ』とか言えないのかしら?」
「現実的に考えて難しいだろがっ!」
「だったら、『護衛対象がウチのメンバーだしなぁ』とか緊張感ない事言うのやめてもらえるっ?」
言いながらキッカは更に肉薄した。
追い込まれたハンはキッカの迫力に抗えず、うんうんと頷くばかり。
そんな二人を見て、エメリーがくすりと微笑む。
ハンはキッカの追及から逃れるためか、何か思いついたような様子でラッツに話を振った。
「そ、そういやリィたんは付いて来るのかっ?」
「どうだろうな。オリハルコンズの招集がかけられたとはいえ、彼女はミナジリ共和国の重鎮だ。ミケラルド殿が動くのであれば彼女も付いて来るとは思うが……」
「でもよ、レミリアちゃんとナタリーちゃんは来てるんだろ? だとしたら――」
ハンがそう言いかけたところで、会議室の扉が開かれた。
まず最初に入って来たのは、レミリアだった。
「お」
閉まらない扉から見える二人の陰。
「おぉ、やっぱりリィたんいるじゃねぇか!」
ハンがリィたんを指差し、その後ろにはナタリーが続いた。
そしてその後ろには――、
「げっ」
アリスから反射的に漏れた言葉にはどんな意味があったのか。それは決してアリスにもわからないだろう。
リィたんよりも、ナタリーよりも注目を集めた人物。
そこには、かつてがリィたん率いる【ガーディアンズ】と、アリス率いる【オリハルコンズ】の実力を査定した人物がいたのだ。
――デューク・スイカ・ウォーカー。
法王国に巣食う闇を払った立役者。
闇の中で闇のワルツを踊る道化者。
そしてその中身は……オリハルコンズの創設者。
だが、その登場は余りにも堂々としていて誰もミケラルドがここにいる事を指摘出来なかったのだ。
キッカがラッツに耳打ちする。
「ちょっと、ミケラルドさんまで来たわよ」
「これは流石に予想外だな……」
「何で顔隠してるのかしら?」
「ミケラルド殿は有名になり過ぎた事もあって、外に顔を出す事をためらったのだろう。名を出せば、それは国としての点数稼ぎととられかねない。しかし……相変わらず読めない方だ」
ミナジリ共和国に住むオリハルコンズのメンバーが着席する。
しかし、ミケラルドすら座ってしまった事で、皆は首を傾げる。
(あれ? 誰が仕切るんでしょう?)
クレアの疑問は他のメンバーも共有するかのように抱いていた。沈黙走る会議室。その静寂を破ったのはこの場にいない者だった。
またもや扉が開かれ、会議室に入って来たのは二人。
最初に入って来た人物を見て、皆立ち上がる。
「「ほ、法王陛下っ!?」」
法王クルスの登場により、かしこまる面々。
それを目の当たりにしたミケラルドはナタリーとリィたんに【テレパシー】を送った。
『ねぇ、俺の時とは違って何であんなにかしこまってるの?』
『ミックはふざけ過ぎだから、緊張より疑問が勝っちゃうの』
『はははは、ミックは仲間だという意識が強い証拠だ』
そんな二人の指摘を受け、ミケラルドは押し黙る他なかった。
法王クルスが中央に立ち、その後ろに続く女。
それは、ガンドフの王ウェイド・ガンドフが派兵したガンドフへの案内人……かつて真・世界協定でウェイドの後ろに控えていた【マイン】というドワーフだった。
資料を片手に中央に立ったクルスが言う。
「では、会議を始める」
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