その561 久しぶりのダンジョン攻略1
いかんせん、俺の持っている闇ギルド員の情報が多過ぎて、アーダインは椅子から転げ落ちそうだった。【
史上最短の
何故ならアーダインが公表を控えたからだ。
正直、法王クルスがパーティ指名依頼を出さなければ一年以上先の事になっただろう。それならば周囲を抑える事も可能だが、今回のようなケースでは特別扱いだという声があがらない保証はない。
おそらく俺が法王国にいる内は公表されないだろう。
「法王国の南西……ここが
ダンジョンは各国に存在する訳ではない。
リーガルに二カ所、ガンドフに一カ所、リプトゥアに一カ所。そして、この法王国に二ヶ所である。シェルフに存在しない理由こそわからないが、おそらく、ダンジョン出現には理由というより霊龍なりのこだわりがあるのだろう。
それは、世界における魔力バランスである。
戦力的に見て、弱者の集まるリーガル国に二ヶ所。強者が集まる法王国に二ヶ所。リプトゥアとガンドフのランクAダンジョンの報酬は病気と怪我に対する保険とも呼べる【イグドラシルの葉】と【エリクサー】。
なるほど、とてもよく出来た
怪我に対する【エリクサー】は、冒険者の傷を治す。冒険者は傷を負うものだし、持っていて損はない。
これに対し【イグドラシルの葉】というマジックアイテムは非常によく出来ている。俺は【イグドラシルの葉】を病気に対する万能薬だとずっと思っていた。しかし、シェルフのバルト商会のバルトが、アイリスの目を治す際に求めていたのは【龍の血】である。
これをバルトに聞いたところ、【イグドラシルの葉】は病気に対する免疫力の増加という効果は得られるが、自然治癒では絶対に快復しない病気に対しては意味を成さないのだ。だからバルトは万病に効く【龍の血】を探していたのだ。
ダンジョンは病人のためにあるのではない。【冒険者】のために霊龍が用意しているのだ。優秀な【冒険者】が病気にならないよう、怪我をしないよう。自衛の手段を増やすように作られているのだ。
マッキリーのランクDダンジョンの報酬――聖薬草と聖水。
リーガルのランクBダンジョンの報酬――
リプトゥアのランクAダンジョンの報酬――イグドラシルの葉。
ガンドフのランクAダンジョンの報酬――エリクサー。
そして、アリスと幾度となく潜り、ギルド査定官として幾度となく潜った法王国のランクSダンジョンには――この……【鍵】。
そう、ランクSダンジョンの報酬はとても古めかしい鍵だったのだ。
大した魔力も帯びておらず、市場にも出回っていない。
剣神イヅナが言うには、
勿論、
過去に
他言出来ない報酬なのか、出来たとしても意味を成さない報酬なのか。
何にせよ、もし攻略が成れば、今の現役冒険者の中では俺が誰よりそれを先んじるという事になる。
霊龍の目論見がどうあれ、【魔人】と差を付けるためには
姿を変え監視の目を掻い潜ってここまで来たが、今のところ誰かに見つかった気配はない。
「……ふぅ」
これまで
だが、侵入してみて初めてわかる。
魔、そのものの圧が……尋常じゃない。
先の戦争に匹敵する程の強い
出会った当初のオベイルが無数にいる感じといえばわかりやすいだろうか。
ダンジョンの情報は二階まで。
イヅナはそれ以上の情報を持ち帰れなかったのだ。
第一階層を象徴するモンスターは二種。
人間大の
そして、そんなバッドデッドスパイダーに騎乗する――【スパイダーナイト】。ナタリー位の子供程の大きさの甲冑を装備した人型モンスターである。
【バッドデッドスパイダー】の蜘蛛の糸を手綱のように使い、ダンジョンを縦横無尽に駆け巡る騎馬一体の二種。
「この場合、騎馬と言っていいのか疑問だけどな」
二種のモンスターが群れを成して俺に向かって来る。
でも俺は――、
「やるしかないんだよなぁ……」
そう言いながら、腰を落とすのだった。
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