◆その342 サプライズ
これは、戦争開始直前に起きた話である。
「ここにきて作戦変更だぁ?」
リプトゥア軍がリーガル国の国境を越えた頃、オベイルは顔を歪ませていた。
それは、ミケラルドが
集められたのは戦争に参加する六名。
リィたん、ジェイル、エメリー、レミリア、オベイル、イヅナである。
ミケラルド商店の
「えぇ、新魔法の開発に
「そ、それは当然です……よね?」
レミリアに
「勿論です。ですが、それよりも気になるのは、他の四人には全力を出すなと言ってるようにも聞こえるのですが?」
「その通りです。レミリアさん十ポイント」
「……何のポイントかわかりませんが、頂けるのなら頂きましょう」
顔を渋くさせたオベイルがミケラルドを睨む。
「楽しくクイズやってる場合じゃねぇんだよ」
「その通りです。オベイルさん十ポイント」
「駄目だこりゃ……」
呆れたオベイルが手で額を抱え、溜め息を吐く。
「先程、ミナジリ国境の手前に要塞を造ってきました」
「国境手前? わざわざ敵国を自国の領土に入れると言うのか、ボン?」
「その通りです。イヅナさん十ポイント」
ここでジェイルが手を挙げる。
「まず、そのポイントが何に使えるのか聞きたい」
「良い質問です、ジェイルさん五ポイント。五十ポイントまで溜めればお好きな武具、アクセサリー、何でも無料で一つお造りします」
瞬間、エメリーが勢いよく手を挙げる。
「はい! 続き聞きたいです!」
「んも~、エメリーさん現金ですねー。可愛いので五ポイントあげちゃいます」
「わーい!」
エメリーが喜んでいる間にオベイルが
「じ、自国に入れるメリットは何だ?」
「オベイルさん五ポイント」
オベイルが小さく挙げた手をそのまま強く握る。
「ガンドフダンジョンに詳しいオベイルさんならわかると思うんですが、キマイラアンデッドの固有能力知ってますか?」
「おいおい、まさかミックが【
「正解! オベイルさん十ポイント!」
「……まじかよ」
そうは言うものの、拳が二つに増えているオベイル。
「それと、ゴブリンゾンビの【徒党の親玉】を使います」
「ほっ! それで我らの戦力を底上げし、
「素晴らしい、イヅナさん十ポイント」
イヅナの説明の後、レミリアが呟くように言う。
「確かに、それならば余裕が生まれる。我らが実力として足りない点、理解出来ます。しかし、他の四人が全力を出さない理由は?」
「レミリアさん五ポイント。開戦して……そう、一時間くらいですかね? 敵が退却を始めます」
「「一時間でっ!?」」
驚き立ち上がるエメリーとレミリア。
「二人共、反応がとても可愛いので十ポイントずつ」
「わーい!」
エメリーは喜ぶが、
「そ、そんな事はどうでもいい! いや、確かにありがたいが、本当に敵が逃げるとっ!?」
「正確には闇ギルドが手を引きます」
「「なるほどな」」
息が揃ったのはイヅナとジェイル。
二人は横目に睨み合い、そして目を背ける。
「二人共カッコいいので十ポイントずつ」
遅れて気付いたオベイルが焦りながら言う。
「つまりアレだろっ、その何だ! その撤退時に全力を出して、虚を突いて捕まえちまえばいいって事だろ? なっ!?」
「素晴らしい! オベイルさん十ポイント!」
「しゃっ!」
オベイルの両の拳が力強く、小刻みに震える。
「この戦争時、エメリーさんは殺される事はないでしょう。やるならばとっくにやっていますから。なので、エメリーさんの行動方針としては極力レミリアさんの援護をお願いします」
「わかりました!」
「返事が良い! 五ポイント!」
「やったー!」
喜ぶエメリーを前に、ミケラルドが続ける。
「つまる事の、闇ギルド相手のサプライズミッションです。エメリーさんとレミリアさん、死ななかったら百ポイントです。オベイルさんとイヅナさん、もし捕えられたら百ポイント。敵も必死に逃げるでしょうから難しい場合は最悪手傷を負わせてください」
「「わかりました!」」
「わ、わかったぜ!」
「エメリーさん、レミリアさん、とても良い返事です。オベイルさん、元気が良くていいですね。各々五ポイントずつ」
「しかし解せない」
オベイルが「よし、よしっ!」と言ってる間に、イヅナが聞く。
「何故相手が撤退すると?」
「良い質問ですね、イヅナさん十ポイント。これは、今日のミケラルド商店の新聞です」
新聞を受け取るイヅナ。
「裏を」
ひっくり返し見た新聞にはこう書かれていた。
――ミナジリ共和国VSリプトゥア国! 果たして勝敗の行方は!? 明日の続報を待て!!
その文字を見たイヅナが、珍しく小さな溜め息を吐く。
「……買えと?」
「正解! イヅナさんに二十ポイント!」
「あ、ずりぃぞ爺! 俺も気付いてたぜ!」
「流石オベイルさん! おまけして十ポイント!」
「おぉおおおおおっしゃああ!」
「買います!」
「ありがとうございます! エメリーさんに五ポイント!」
「これは気になる。私も買います」
「ありがとうございます! レミリアさんに五ポイント!」
と、盛り上がっている中、一向に喋らないリィたんを見て、ジェイルが首を傾げる。
「珍しく何も言わないのだな?」
「ジェイル、お前は何か勘違いをしている」
「何?」
「私が頼めばミックは何でも作ってくれるぞ」
ピタリと凍り付く空間。
「そうだった」とジェイルが納得し、ミケラルドが微笑む。
「正解! リィたんに二百ポイント!」
「ふっ」
全てをかっさらうかのようなリィたんの笑みに、オベイルとエメリーが突っかかる。
「おい! 会議はまだ終わってないんだろ!? 続けるぞ!」
「そうです! 後三時間くらい出来ますよ!」
そしてレミリアが、
「
その後、かつてない程の綿密な作戦会議が行われたのだった。
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