その273 ガンドフのお宝
「こりゃキツイ……」
モンスターのランクとは強さだけでなく脅威でも決まるのだ。
このダンジョンの一階層にいたソルジャースケルトン。奴らは強さだけで言えばC~Bのモンスターだ。しかし、一階層のように群れれば確実にA以上。勿論、ジェネラルゾンビもそうだ。四体でランクAは納得である。事実、冒険者ギルドでも奴らはランクAモンスターとして登録されている。
そして個体の強さが確実にAとなるキマイラアンデッド、サイクロプスアンデッドは一体で出現した。だからここはランクAダンジョンなのだ。
群れの脅威度、それが今回のポイントだ。
我が眼前でキーキーと鳴き、わからない言語で俺を威嚇するのは正にゴブリン。
そう、俺はゴブリンゾンビと対峙している。
ゴブリンがゾンビになったところでランクはせいぜいD程度の強さ。
しかし、数が百を超えれば、当然、その脅威度はランクAとなる。
だが、今回はそんな少ない数ではない。
「オベイルはこれを全部倒したのかぁ~」
復活しまくるというオプション付きでやったオベイルを称賛したいところだが、そんな暇は今ないのだ。
なんせ相手の数は三百に近い。これを全て相手にすると、正直疲れてしまう。そう、精神的に。だから俺は滅多に吐かないブレスを吐いた。
正直、自分が口から炎を出すとは思わなかった。
八階層は聖加護を付与した武器よりも、復活前提でこっちを使った方が効率が良いという判断だが、どちらの方が正しいのかは今後の検証次第だろう。
検証するのは俺だ。とても辛い。企業の末端構成員になってイエスマンとして生きるのも一つの手だと思えてしまうあたり、冒険者って本当に大変である。
これはある意味、冒険者とゴブリンゾンビの戦争。
相手にとって、俺は怪獣なのかもしれない。
だが、そんな怪獣でも勝てない相手がいる。
世の中は広い。だからこそ、その広い世の中を存分に使い、俺は成長するしかないのだ。
「とは言え、限度があるだろ、限度が……」
ガックリと肩を落とす俺の視界には幾多の屍が転がっている。
目算でおよそ千五百の死骸といったところか。
つまり、このダンジョンの
どういう理屈かはわからないが、思うようにいかない世界なのは認識しているつもりなので、不思議と腹は立たなかった。
まぁ、それを言えるのも、大して苦戦していないからである。
ランクが上がっていくにつれ、俺の不平不満は募る事だろう。
ゴブリンゾンビの血をぺろり。
手に入れた固有能力は【強威嚇】と【徒党の親玉】。
【強威嚇】はわかるが、またわからぬ固有能力だ。能力の事が詳しく載っている本でもないものか? スパニッシュの書庫とかにありそうだったんだが、あの時はチェンジも使えなかったしなー。
そう、ないものねだりをしてもしょうがない。何事も実験と検証あるのみである。
さて、宝箱は……?
「出た! オリハルコンの塊!」
これまでずっと聖水だったのだ。喜ばない方がおかしい。
マッキリーのダンジョンにあるような欠片ではなく、握りこぶし程のオリハルコンの塊。ここに籠ればひと財産築けそうである。
やはり、【聖加護】を使った楽々攻略だと宝が【聖水】となり、通常攻略だと大変だけどちゃんとしたお宝が出るようだ。
急ぐ場合は【聖加護】で、しっかり宝を集める場合は通常攻略ってところか。
一長一短だが、これもダンジョンのだいご味の一つか。
その後、復習階層の九階層、十階層を攻略。
九階層は、キマイラアンデッドとサイクロプスアンデッドのコンビ。
十階層にはそれにゴブリンゾンビが混ざって、ある意味地獄で、ある意味楽しい場所だった。
さて、最終階層のボスモンスターは一体?
階段を降りると、そこは漆黒の闇に包まれた大きな部屋だった。
ひんやりとした空気と、無音の空間。
ギシャリ、そんな音が耳に届いた。
音がした右後方に警戒を敷き、メイスを構える。
光魔法【トーチ】を発動し、部屋の天井、その隅に目をやる。
そこに張り付いていたのは、静かに俺を見ながら
「……グリフォンかな?」
俺が首を傾げ、グリフォンスケルトンが大きく嘴を広げる。
「キィイイイイイイイイイイイイッッ!!」
「つぉ!?」
まるで超音波。
一瞬で耳がいかれてしまった。
すぐさま【ダークヒール】で回復し、グリフォンスケルトンに近づく。
すると奴はソルジャースケルトンのように天井を歩き、小走りに俺の攻撃をかわしたのだ。直後、俺は壁を蹴り、ソルジャースケルトンから得た【壁歩き】を駆使し、その後を追った。
これに面食らったのか、グリフォンスケルトンは硬直したまま【聖加護】が施されたメイスによって砕かれたのだ。
「なんていうか、やっぱりランクAだったな」
苦戦するとは思ってなかったけど、サクっと行き過ぎなのも問題だ。
まぁ、それも今回ばかりだろう。法王国ではそうもいかないのだから。
グリフォンスケルトンの骨の粉末から【超音波】と【灼熱耐性】をゲット。
さぁ、いよいよダンジョンのお宝とご対面だ。
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