073:予選前

 後日、レギュレーションが発表され、無事、近距離戦と遠距離戦の二つの区分けが記載された。良かった。


会場:日比谷迷宮第一階層特別ステージ


・近距離戦

時間無制限、ノックダウン制、事前準備禁止 対峙30メートル位置にて試合開始。武器防具、魔術使用等、制限無し。


・遠距離戦

時間無制限、ノックダウン制 事前準備有効 対峙1000メートル位置にて試合開始。武器防具、魔術使用等、制限無し。


 えーと。近距離戦は、主に武器での戦いがメインになるだろう。スキル、ギフト、魔術なんかは戦闘中に掛けていく事になる。


我が主君マイロードの様に剣で戦いながら魔術を使えるなんていうのは、あり得ないですし、普通は発動まで時間が掛かるので使えません」

「まあ、近距離戦は単純に武術勝負になりそうな。進次郎はこっちか?」

「ああ、そうだな。宗一は?」

「俺は……迷うな、しかし。日比谷迷宮の第一階層ということは……」

「花壇森と丘地帯ですね。中央に丘。その回りが森です。多分、近距離戦は丘。遠距離戦は森での戦いになるかと思います。デートとかいいですよね……花壇で。靖人様とデート。そして、デートしながら……」


 っていうか、お漏らし……パーティ会話じゃなくても漏れてないか? 心の声。


 確かにね〜アタッカーならもう、確実に近距離戦だけどね。弓使い、魔術士なら遠距離戦しかない。だけど盾は。この手の1ON1大会には不向きだよね。


(今回は仕方ないけど、今後はジョブ毎とか……最低でもロール、役割毎での区切りとかはあるんじゃないかな)


「そうなった方がうれしいっすね、個人的には」


 そうね。的場さん、盾的にはそりゃそうね。


 まあでも何よりも。今回は魔術がスゴイって所を見せなければならないようだ。そのために母さんがとにかく急がせた。運営に余計な事を考えられるほど余裕がないのだ。


 取り合えず、俺は大会運営から何かと依頼を受けた、ということにした。深く聞いてはいけませんよ感を出したことで、誰も何も言ってこない。うん、大人だな。みんな。


 そして……俺は。迷宮局のゆるキャラの「迷宮ネズミのメイキュくん」の着ぐるみ外装を着て優勝者、及び、上位入賞者の中の希望者とのエキシビジョンマッチが決定した。どうしても、鼻っ柱をブチ折って欲しいらしい……。


 因みに近距離戦、遠距離戦の両方で、だ。


 迷宮局的には優勝者決定~記録には残らないけど、着ぐるみ着てて誰かは分からないけど~討伐隊の誰かがエキジビションで、上位入賞者全員をボロボロに→迷宮局スゴイ→順次魔術の基礎情報開示、ものすごく受け入れられやすい。という目論見らしい。


 そのため、事前にメイキュくんの中身は討伐隊のエリート&迷宮局の最新研究の成果、魔道具の効果の結果として発表される。で、まだまだ不確定で公開不可能な情報も多いと言い訳もしておくとのこと。


 メイキュくんの着ぐるみ外装は魔道具で、ある程度の身長体重の増減が可能だそうだ。なにそのムダに高性能。一度着てみたが、マジで超レアな魔道具で、ほぼ着ている感触が無い。視界も妨げられない。その時は軽装フル系の装備の上に着たのだけれど、ほぼ着ぐるみの感触が無かった。

 母さん……大賢者様の魔道具作成の実力、本気ってやつだ。外側はハムスターとマウスの合いの子みたいな可愛いセンスの無い外見……あ、いや、それも母さんらしいや。


(甲田さんは、森に向かって移動して、舞台を強引に自分向きにしてしまえば、かなり勝てる気がする)


「はい」


(的場さんは盾だけど、バトルセンスが高いから槍とか使っても面白いかもね。片手槍)


「あ、短槍は昔使ってましたね。確かに、その通りかもしれません」


(あと、盾で敵を攻撃するとか。バッシュとか盾攻撃はポイント高いよね。魔術を使えるともっと勝ち筋が見えるんだけど)


「ですね……術はいまさらなので、バッシュを練習してみます」


(で……なに? 私は、私はって顔は)


「わ、私も何かアドバイスを」


(というか出るの? 戦闘の基礎もないのに)


「で、出ませんけれど、二人と同じ様にアドバイスを」


(魔力の認識は? 出来た?)


「は、はい、出来ました!」


(どんな感じで?)


「えっと、ぽあぽあっとしたのがお腹の辺りにある感じでー」


(で?)


「ま、まだ、それ以上は」


(じゃあ、それ以上になるまで、ずーっとそれ。大体、1日十時間やり続けて、二年くらいすればどうにかなると思うよ)


「ガーン」

「それは我々も……ですね」


(ああ、そうだね。甲田さんも的場さんも。少しは魔術を使えないと、この手の大会では勝てないだろうから。今後)


「それは……その通りですね」

「はい」


(魔力がそこそこ増えてくれば、お漏らしみたいに迷宮外でも訓練出来るようになるから)


 正直、ビックリしたのだが、既にお漏らしは「迷宮外」で魔力を感じ取れる程度の魔力を持っている。初期レベルではあんなに魔力欠乏で倒れていたにも関わらず、現時点でもそこまで高レベルではないにも関わらず、先輩二人よりも確実に、魔力が多い。

 さらに、魔力を感じ取るセンスも悪くない。繊細……というか、魔力に対して凄まじく敏感だ。これが天才というヤツなのだろうか。お漏らしのくせに。なんとなく腹が立つ。


「まあでも……著書に寄れば、「張角」宮沢賢太郎さんでも魔力を感じられたのは、魔術を意識してから約五年後とのことでしたから……靖人様の教え方は最適な理を解いていると感じます。感じます」


(なぜ二回言った。このエロお漏らしが)


「がーん、お漏らしだけでも酷いのに、エロまで付いてしまった……」


(エロイだろ! 犯罪なんだぞ! 16歳に対してそういうのは!)


「ガーン、確かに……国に禁じられた恋だったとは……ううん、詩織、負けない! だって諦められないんだもの! 全然」


(そこは諦めろよ……そろそろ。ちゅーか、性格……確実に変わったよね?)



 






 

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