072:役割

(で、自分は参加しないとなんですか?) 


「ああ。いや、そうだな。参加というよりは……いや……」


(?)


「もー素直じゃないなぁ。お小遣いあげるから手伝ってでしょ?」


(? 何か意図が?)


「姫様に任せておくと時間が掛かりそうだから、私がまとめるよ?」


(今回の天下一武闘会、会場は日比谷迷宮の一階層。開催期間中、姫様が身動き取れなくなるんだよねぇ。なので、開催中の抑えをお願いしたいかなぁ~と)

(抑え、というと?)

(イレギュラー。今回の大会は迷宮のシステムに逆らうモノになる。なので、こちらの予想外の事象が発生する可能性がある。万が一ではあるが、それに備えていて欲しい。なので本戦は参加しなくてもいい。頼めるのは愛しい我が子しかいない。地球上で唯一)


 ビックリ! いや、慣れん。って母さんも顔を赤くして固まっている。


「あーもう、姫様も大概パーティ会話下手くそだな!」

「下手じゃない。靖人だけ、なる」

「気を許してるのは判るけどさ。この後、数時間、恥ずかしくて仕事にならないじゃん。何とかしれ」

「むり。出来るならしてる」


 まあ、でしょうね。


(おおざっぱには解りました。母さん……身動き取れなくなる、かかりっぱになるってことは、何処までやるつもりですか?)

(おう。さすがだね。さすが宗主様。話が早い。私が負けただけの事はあるね。そういうことなのよ。ぶっちゃけ、護衛側としてはそこまで……と思ったし、何度も言ったんだけどさ)


「参加者個人のアストラルによる疑似生命体の創出と、安全確保。実体への上書きをリアルタイムで行う。さらにそれによる、フィードバックの保証。さらに、会場のアストラル固定化」


(……母さん……)


「ね!」


(それは……やり過ぎでは……木刀というか疑似武器とかをアストラルで作る……とか)


「完全に疑似では意味が無いのだ。迷宮での武術の恐ろしさと魔術の強大さを世の中に広めると共に、探索者たちに自らの力に恐れを抱かねばならん」


(それはそうでしょうけど……たが、母さんの選んだやり方は、貴方が本当に付きっきりで、しかもいくら貴方でも限界ギリギリまで能力を使い切ってのことなのでは? 会場の大きさから考えて……正直無茶だ)


 そう。それはもう……いくら大賢者とはいえ、人間の存在を超えている。ふう……まあ、超えてたか。昔から。


(……母さんが本気でそれに集中してしまうということですね……。でも自分に出来る事なんてたかがしれてるというか)


「にしし。謙遜も程があるよ、ヤスチン。あのさ、総長との事とか聞いてるよ~? ああいうのやってってことさ。魔術でも~」


(魔術? 辛くないですか? 防御魔術って大事だけど大抵地味だし……)


「そうなんだけどね。どうにかできないかって相談だよ~ん」


(武器も魔術も同じ場所、同じルールで闘うんですよね? せめて遠距離と近距離で分けないと勝負事にならないんじゃないでしょうか? 魅せる為にはある程度のクラス分けは無いと……準備時間次第ですけど、一瞬で片が付きますよ? 特に魔術は準備段階がもの凄く地味だから)


「ほらほらほら! ほら! 姫様! 言ったジャーん! ほら! 言った通りじゃん! 武器バトルと魔術バトルとか、近接と遠距離とか分けないと、ショーにはならないよ? って」

「むう」

 

 そこから……ルール改定というか、ルールの算定が非常に面倒なことになった。真白さんが言うには、現在活躍している通常の探索者の「魔術士」は、非常に限定的で万能型とは言えないレベルでしかないとのこと。まあ、そうだよね。黎明期はそういうことになるよね。


 ココで言う、万能型っていうのは、魔術士なのに、ある程度近接戦闘もいける者の事を指す。魔術の世界レベルというか、魔術全体のレベルがかなり高まっている場合の話だ。母さんはこれを目指していたというか、万能型の最高峰ってヤツまで上がっていたいたハズだ。


 そもそも、生粋の魔術士は近接戦闘に非常に弱い。ジョブとしての致命的な弱点とも言える。


 さらに本格的な魔術を行使するには、金属製の鎧などの装備は邪魔になることが多い。つまりは、物理防御力が非常に低くなる。さらに、呪文詠唱という物理的なマイナス点もあるので、懐に入られて、剣を振り回されたらどうにもならない場合が多いのだ。


 で、今、最高峰の剣士と、魔術士が「お互いの姿が見えるくらいの近距離」で正面から闘った場合。試合開始から詠唱スタート……ということになれば確実に、剣士が圧勝する。というか、魔術士として参加した者は、尽く、術を放つ前に倒されてしまうだろう。


(3vs3とかのチーム戦はムリですね。母さんのやろうとしているそのシステムじゃ。ということは、ソロでの試合のみ。ってことは、やはり、近接戦闘部門と、遠距離戦棟部門で分けないと、魔術を映像で見せる前に、勝負は付いちゃいますから)


「だよね~パーティバトルはムリだね。姫様の負担がおかしいレベルになる。というか、多分、今の仕様でもギリギリでしょ~?」


(ええ、そうでしょうね……というか、母さん、大丈夫なんですか? 本当に。神にあらがうだけでも異常な負担になると思うんですが)


「大丈夫」

「姫様~こういう口をして大丈夫って言う時は頑固だからなぁ~」


 かなりムリをして大丈夫ということなんだろう。
















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