064:謝罪

「最初の一矢を防がれた時点で負けを認めるべきでしたね……ということで、私も雇っていただけませんか?」


 ……え? 何そのモノのついで的な。このアイドルプロデュース系ゲームな展開。ああ、うん、まあ、俺がプロデューサーさんじゃないのは良く判るよ? 判る。社長だよね。俺は。社長ポジション、というか、現実に取締役社長だしな。うん。明らかに。で。ヨスヤの狙いというか、熱い瞳は……甲田Pを見ている。判りやすい。知ってた。


(……いやいや、アイドルだし……そもそも、契約とかしてるでしょ? 今の事務所に。あと、うちみたいな零細というか、小さな会社に不釣り合いというか)


「泰代、お前、契約があるだろ? 今の事務所と。あと、うちにお前が入るとなると色々と面倒だ。悪目立ちする」

「進次郎さん、酷い」

「泰代、兄ちゃんも同意見だなぁ。森田さんにはお世話になってるじゃん」

「……ぐすっ……」


 あ。泣かした。アイドル泣かした。


「あ」

「あ」


 兄ちゃん二人でなに見つめ合ってるんだよ……いや、こっちみんな。ムリでしょー? なんで、俺を見る?


 え? なに? これって言うこと聞かなきゃモードなの? 泣く子に勝てないってこと? ええーやめてよーこういうのを、年少者に丸投げって!


 女の涙に、いや女性に人一倍、免疫無いし! 


(こ、甲田さんに! 任せ、任せます)


「あ? え? 我が主君マイロード! そんな!」


(どうなっても良いので〜)


 ということで、甘える子供と、幼馴染みのお兄ちゃんの熱い会話の結果、ヨスヤがキチンと事務所の人に説明して、円満で契約解除となったら、うちに来ることを検討するという約束をした。

 彼女とはそこで別れたが、的場さん曰く契約解除は難しいだろうということだった。CM等も決まったばかりだと言っていたらしいし。

 実際に今日も、護衛というか、SPの人たちをバッチリ撒いて来たらしい。そりゃぁねぇ。静音だけでも厄介なのに、透明まで使われたら。ねぇ。追跡出来るのは探索者の中でも限られた者だけだ。



 家に帰ると、山県さんに来客を告げられた。じいちゃんじゃなく? と思ったが、俺とじいちゃん、共通の? 客? 何それ。


 甲田さんが後に続く。ああ、もう、誰かと話しをするときに、通訳的な役をしてもらうのが当たり前になって来ちゃったな。

 良いのかな? 一流の探索者にこんなー身の回りの事というか、執事なんてやらせてて。別に執事をバカにしているつもりは無いけど、技能の向き不向き、適材適所ってあるわけでさ。


 応接間に行くと、ソファで対面している二人。見知らぬおじいさんが、じいちゃんに頭を下げていた。ん? 俺に? 用なの?


「貴方が、若様、宗家様ですか。この度は誠に申し訳ありませんでした……」


 ? ん? どういうこと?


「ああ、靖人。彼は本庄の現当主、本庄雅賴氏だ。ワシはもう忘れてるからと言ったんだがな。どうしても謝罪したいと聞かぬモノでな」


 本庄、本庄……確かになんだったっけかな? 多分、ポカン? という顔をしていたのだろう。


「九月に大矢の手下が倒れていて、助けたという話をしておったろう? まあ、実際は尾られていたようだがの」


 ああーああ、ああ。というか、んじゃ、この人は……えーと。お漏らしさんのおじいちゃん……かな? 本庄グループの元社長? 会長? かな?


(ああ、思い当たりました。尾行されてウザかったので眠らせただけで。謝罪するほどのことじゃなかったですよ)


「思い当たりました。まあでもちょっと追い払っただけで、別に何も無かったですから、謝罪はされなくて結構ですよ?」


 甲田さんがキチンと伝えてくれる。カンペキだ。


「そうはいきません。先祖代々、歴代の御厨宗家様にはお世話になり続けてきたにも関わらず、知らなかったとはいえ、よりにもよって現在の宗家様に探りを入れるような真似を……」

「それはここ百年近く、各家ごとに動いていた部分が大きい上に、本家分家、そして宗家と各自が連絡を密にすることもなかったからの。仕方あるまいて」

「とはいっても……大矢を使う私がキチンと管理出来ていなかった証拠で……」


(うーん、その辺もう、いいよなぁ)


「宗家様ももう、気にしないということですので。本庄様もお気になさらず。これ以上は互いの為にならぬかと」


 うむ。甲田さんが、これ以上しつこいなら、そっちの方がマイナスになる可能性があるよと釘を刺した。気持ちはなんとなく判るんだけどね。本庄さんの。

 そんなちょっと強めの言葉に、ムリくり納得した……という表情をした本庄さんだったが……それを一転させて、それまで座っていたソファからガバッと降りて、土下座に発展させた。


 ……なんていうか、まあ、ちょい前に、これ以上は無い無重力土下座とでも言うべきモノを討伐隊総長に見せつけられているので、そこまで感動は感じなかったが、ソファから一気に止める間も無く土下座に持っていった本庄さん。ただ者では無い感が半端ない。


 って土下座。なぜ!


「それらを踏まえていながら、さらに、さらにお願いが御座います。宗家様に於かれましては、この度に探索者の会社を設立したとのこと。そこに是非とも加えていただきたい者が居りまして……いかがでしょう? 如何様にもしていただいて構わないのですが!」


 どういうこと? 今のところ社員募集してないんですけど……うち。


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