062:ジョブ

 探索者の役割は、組んだパーティによって大きく違う。振り分けられるというか、組んだメンバーの中で変更され、訓練していくことでなじませていく。なので、ゲームの様に厳密なジョブをシステマチックに取り替えて……の様なモノは存在しない。あったら便利なのにな。ジョブチェンジシステム。

 まあ、自分の能力、所持しているスキル、技がどんなモノか理解しているかどうかは非常に大きい。

 そもそも、スキルも技もネットなんかで言われているのは、勝手な内容、名称で、迷宮局が定めた公式のものじゃないしね。自分が「俺がこういうスキルがある! と思う」「自分はこういうスキルを使える! と思う」っていう自己申告でしかないから。所詮経験則。


 レベルやステータスの表示される、測定の水晶、それに関係する魔道具、システム、術の「鑑定」も存在しないのだから、しょうがない。判りようがない。


 その辺も、魔術と同じ理屈で母さんがワザと公開していない、決めなかった、教えていないわけで。測定は出来なくても、こういうモノが存在して……っていう。基礎的な情報くらいは……とも思わないでもないんだけどね。俺は。


 ということで、ハッキリとは分からないが、多分こういうことだろう~っていう推測の元に、現時点で判明しているというか、なんとなく広まっているジョブは……。


剣士:西洋剣で戦う前衛。日本刀使いは刀士とは言わない。逆に西洋剣であれば、ロングソードからファルシオン、運用法の明らかに違うモノでも、西洋剣で一括りされている。


戦士:剣以外の武器で戦う。斧とか、ハンマー、棍棒、バット等を使うのは戦士扱い。


槍士:槍で戦う前衛。槍だけで亡く、棒術も棒士、棒術士とは言われず、槍士扱い。


薙刀使い:槍の一形状じゃないのかよ? っていうツッコミはごもっとも。日本の女性探索者の薙刀比率が非常に高いため、槍とは別ジャンルで語られることが多い。さらに言えば、主に女性が行う近接武器武術というのが薙刀しかなかったということもあって、そういうコトになっている。迷宮出現直後は、女性が武器で戦う=薙刀しか道場などの習う場所が無かったのだ。


侍:日本刀で戦う前衛。これは……もう、日本刀自体の破格の強さと、「剣豪」目加田真司郎の普及が大きかった。正直、同じ作りの薙刀と比べても、日本刀の方が攻撃力は高い。作り手である鍛冶師の魂が込められている度合いで変わるなんて精神論さえ出ている。あ、ちなみに、現在では昔ほどの差は無いが迷宮内の強武器といえば、一位:日本刀、二位:薙刀という順位は今も変わっていない。


アンテナ、スカウト:斥候、周辺警戒、敵探知、罠探知などが仕事の中衛。この専任担当がいるパーティは結構少ない。


アーチャー:弓、とはいっても、手入れや取り回し等の関係上、和弓を使う者は皆無。初期は使い手がいたらしいのだが、主に迷宮内の狭い通路などでの取り回しが難しく廃れていった。その辺の人も、オリンピックなどのアーチェリー競技で使用されていたリカーブボウ、さらに原始的なベアボウの進化させた弓で戦う者が多い。複合弓、コンポジットボウやボウガン等のギアや機構の組み合わさった「若干でも機械要素の加わった弓武器」は迷宮内では殺傷能力が無いどころか、満足に機能しないため使用されていない。


細工師:扉や宝箱の鍵を開けるためだけのジョブ。罠の解除も行う。いると非常に便利なのだが、非常に稀少な上に、戦力にならないことも多いので、余裕のあるパーティにしかいない。


盾士:盾を持つ剣士&戦士。片手武器なら得物は何でもあり。主に盾役として立ち回る。アタッカーが片手盾や、肩盾を装備して臨時の盾士となる場合も多い。というか、盾士なんてリアルだとあまりいないし、そんな呼び方もあまりしない。


守護者:大盾を持つ戦士。大抵、片手棍や、片手用のバトルハンマーを持つ。こちらは正真正銘、パーティの盾として活躍する。背中に大盾を背負うことになるので(容量的に保存庫に入らない場合も多い)、一目で分かる。専門職に近い。


魔術士:属性などは関係なし。魔術で戦う者は全て、魔術士となる。使いモノになる属性があると、それで呼ばれることが多い。


白魔術士:魔術士の中でも癒しの術に長けた者。ぶっちゃけ、光属性の術士なのだが……非常にレアで、重傷を治療出来るのは、ランカーや討伐隊の中でも数人と聞いた覚えがある。魔術士がレアなのに、さらにその中でも……っていう白魔は激レア。後衛の中でも細工師に次いで育成が難しく、そこそこ余裕のあるパーティやギルドにしか存在しない。


 現状はこんな感じだろうか? 目安でしかないけどね。スキルというかギフト、熟練度を確認することが出来ないため、ジョブの細分化が為されていないし、そこまで専業化も進んでいない。

 雑誌なんかで色々特集されているが、毎回、ジョブ名なんかが微妙に違ったり、当然、カテゴライズの理由もハッキリしていない。


 まあ、そんな雑誌の記事の内容が推測とか曖昧なのはしょうがないというか、仕方ないとしても。そういう状況が探索者全ての流れになっているのが非常に良くない気がする。


 自分が何者か判らない状態だと、どうしてもそのジョブ専用の鍛え方とか、考え方が発展しない。アレだ、家内制手工業から工業制手工業へ変わっていったのと一緒というか。違うって言うか、うーん。マニュファクチャ。


 ジョブとか職業の分業制がキッチリしていないのは、攻略法が確定していないってことで……ってまあ、マニュアル通りにいかないから仕方ないのかなぁ。

 

(探索者、こんなレベルでいいんですか?)

(明確に数値化されないのに、曖昧さを排除していったら、どうなると思う?)

(……言った者勝ちの常識が、曖昧な部分を排除し、発動が目に見えるいくつかの能力所持者が持たぬ者を迫害し始める?)

(決闘私闘、闇ランクもあるからな。そう簡単にはいかんだろうが、能力による査定が始まるだろうな)

(空属性の様に、ですか)

(ああ、騎士になりたくて必死に努力していたにも関わらず、ギフトが無いというだけで夢を諦めるのが当たり前……とかな)


 返す言葉が無かった。この世界にも受験という数値化の試練はあるが、能力値が判る世界の閉塞感は半端なかった。


 それが絶対過ぎて、表示される数値に、逆らうなどという気すら起きないのだ。


 それを一番良く知っていたのは俺のハズなのに。目先の成果、利益、便利さ、という誘惑にすっかり失念していた。


 まあ、そうですね……大切なのは魔物に勝つというだけじゃない。一般人が生きてゆく、生活してゆく部分に、迷宮が大きく侵食してしまうと、モラルハザードに巻き込まれてしまう。

 迷宮のモラルと現代社会のモラルは大きく異なる。それのダブルスタンダード状態を恒常化して、通常の生活を続けられるほど、強くないからね、人間は。


 矛楯する二つの常識を抱えて生きる……想像するだけで厳しいからなぁ。


「まあ、とはいえ、もう少ししたら以前から進めていたプロジェクトが一歩前進する。それで少しは変わるだろう」


 はい、期待しておきます。って母さんはたまに帰宅すると、結構パーティを組んでくれる様になった。俺との会話のために。だけど、話が終わりそうになるとパーティを抜けて、普通に話をして終わりにする。そんなに恥ずかしかったんか。内面が散見してしまうの。


 俺、昔、父さんと一緒にいた時のデレデレの貴方のこと……よーく覚えてるんですけど。だから今さらなんですけど……。






 









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