039:ドラ?

  迷宮の出現によって、オークやオーガ、ゴブリン、スライム、リザードマン等、ファンタジー世界さながらの空想世界の産物、有名魔物が数多く、この現代社会で確認された。研究家によれば、そもそも、何故、ゴブリンやスライムという存在が、空想とはいえ、迷宮出現以前に魔物として認識されていたのかが自体が謎とされている。


 だが、人類の前に出現したのは、それら、お馴染みの敵だけではなく、名称不詳な魔物も多かった。さらに多くの有名魔物は発見されてないし、なぜいないのかも不明のままだ。


 攻略され尽くしていない、迷宮の深層にまだまだ様々な魔物が生息していると言われ続けているが、真相は明らかになっていない。だってまだ誰も深層に到達していないからね。


 で。ドラゴン。有名にして強大な力を所有する、ゲームでボスと言えばコレという位のお馴染みさんなんだけど、これまで迷宮では確認されていない。


 迷宮ではある程度の階層毎にボスエリアが出現する。強力で巨大な魔物がボスとして登場する場合が多いのだが、ファンタジー世界において、ドラゴンに比べれば格下ばかりだ。

 ミノタウロス、リビングアーマー、スケルトンウォーリアー、ガルーダ、グリフォン、ジャイアントスパイダー、マンモス、一角兎、セイレーン……。

 まあ、見事にB級か。とはいえこれらのボスだってただ簡単に倒されたワケじゃない。何人もの探索者が血を流している。


 だが現実として、ドラゴンが現れた以上……更なる血が求められるのは確定的だ。ドラゴンが既出のボスより弱ければ何の問題もない。


 そんなわけ、ないよなー。見た目がドラゴン。で、実力はジャイアントサラマンダー……ないな。ない。報告したのは素人じゃない。討伐隊の隊員、俺が死合っていた最中も潜ってたということは斥候専門、中でもパーティ単位で適時戦闘行動に移行できる、威力偵察が可能な隊員たちだ。

 大規模作戦中、武力集団、まあ、小規模とはいえ軍隊で戦闘「する」か「しないか」を判断する権限をパーティ単位で構成された部隊単体で行う。武装偵察部隊ということになるんだろうが、この場合かなりの信頼、討伐隊で言えば階級や実力持ち以上で構成されているなどの、客観的な事実が必要になる。カメラなどの記録媒体が無いため、地上ににいる指揮官の意見を確認してから……という悠長な手続きは踏んでいられない。


 まあ、優秀な隊員からの信頼出来る報告ってやつだ。あの「ドラゴン」っていう単語は。


 散々待たされたあげく。今日は今後の方針がまとまらないということで、帰宅許可が出た。が、明日からの拘束、いや、指名依頼を受けさせられたけどね。


(指名依頼は基本、断れませんからな)

(だねぇ。迷宮局からの依頼ってだけでもう無理だもんね。逆らったら腕輪没収って本当?)

(免停、免取は違反者への罰則ですが……緊急時の迷宮局からの指名依頼の拒否も罰則認定されてます。点数は重要度によって可変します。一つの依頼拒否で免取は聞いた事がありませんが、裁量権は迷宮局にありますので)

(学校終わってからで良いってだけでもかなりの譲歩なんだろうな……)

(はい。多分、討伐隊としては、朝から待機させたいハズです)

(だよね)


 俺の暮らす、じいちゃんの家は所謂、旧家、名家の佇まいで家族三人だとかなり広い。家屋が幾つかと道場。裏山ほぼ全ての雑木林の敷地が庭だ。

 お手伝いの今日子さんは通いなので、使用人部屋のある離れは丸々空いている。さらに内弟子のための長屋。今は山県さんたち三人か。じいちゃんが子供の頃は高弟、師範代を含めて三十人近くがここで生活していたそうだ。

 俺の部屋も勉強部屋と寝室が続いている。二部屋。無駄に広い。元はじいちゃんの本当の息子さんが使っていたそうで、家具も無駄に豪華だ。ちなみに、うちの親がその息子さんの仇を取ったらしい。で、イロイロあって、幼少期から俺はここでお世話になっている。


 勉強机に使用している、両側に袖机の付いている偉そうな机の前に甲田さんが立っていた。


(んーそれにしてもそこに立たれると、なんか……俺がクソ偉そうな感じになってない? この部屋)

(少なくとも私にとっては、尊敬する君主で有られますから)

(……なんでそんな時代錯誤な主張が認められてしまうのか)


 甲田さんは、いつの間にか、パーティメンバーというか、住み込みの俺の秘書というか、執事(本人談)として入り込んでしまった。


(入り込んでしまったなどと人聞きの悪い。御屋形様に許可をいただきましたし)


 そう。この人はじいちゃん、ばあちゃんにキチンと説明し、説得してここにいるので、俺にはどうにも出来ないのだ。


(御屋形様、奥方様からは素晴らしい心掛けと。褒めていただきましたから)

 

 じいちゃんばあちゃんはなー赤の他人の俺を自分の息子、孫の様に時に厳しく、愛情を持って、まあ、可愛がって育ててくれている。今では書類上はじいちゃんの養子なので、本当の息子だ。ぶっちゃけ……二人とも親代わり、親バカ状態だからなぁ。

 甲田さんは俺の事を君主として如何に素晴らしいかを語り、二人を良い気分にして住み込みの執事を認めさせたのだ。あっという間に、使用していなかった使用人部屋に荷物が持ち込まれて、住み込みで仕事(ぶっちゃけ、他人と会話してくれるだけで助かっているんだけどね)を初めてしまった。給料は別にどうでもいいらしい。俺が受け取らなかった彼の財産をそれに充てるそうだ。俺的にはもう少し稼げる様になったらちゃんとしようと思っているけどさ……。


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