第131話15-9

 ――回る、回る、目が回る。



ぐるぐる、ぐらぐら、視界は揺れて。



ガッチャン、ドサリ、身体は崩れて。



ゆらり、ゆらゆら、這いつくばって。



あはは、きゃはは、響く笑い声。




『……何、何が起きたの???』



 ジュリは”遊戯室”と書かれた扉の前で倒れ伏していた。

数秒前、勢いよく扉を開けた瞬間、突然に身体の自由が利かなくなったのだ。脚は震え、視界は揺れる。耳に入るは”遊戯室”からけたたましく響く笑い声。

そして、肩の辺りから走る鋭い痛み。さらに眼前に広がる女の顔、顔、顔。それらは泣き笑いに近い表情で、けたたましく笑い続けていた。


 脚は震えて、それらの顔から距離を取ろうにも這いずるしかできない。

揺れる視界で何とか状況を整理しようと、震える手で肩から走る痛みの”原因”に触れる。



「棘……。毒でも盛られた……?」



 肩から突き出た、アンテナのような太く、鋭い棘。

ジュリは痛みの”原因”に手を触れると、唇を噛んで力任せに引き抜く。



「っ~~!」


 肩から噴き出す、鮮血。

痛みのあまり、強く噛みすぎたせいで唇からも血が滴る。だが棘を抜いたところで、身体はまだ言うことを聞かなかった。



「きゃはは、「きゃはは、アハハ!「あはは、きゃはは、」アハハ!「あはは、きゃはは、」」



 ”顔”たちの笑い声が、一層激しさを増す。

そして何本ものツタが、蛇のようにジュリの足へと巻き付き、締め上げる。

ジュリの足は絞め上げられたことにより、骨は悲鳴を上げて皮膚は裂ける。しかしジュリは叫び声を一つも上げずに、冷静に手に持ったチェーンソーで足に食い込むツタを刈り続ける。



 だが、それも時間の問題。

毒に侵されて力が抜けた腕では、満足にツタを薙ぎ払うことはできなかった。一本、また一本とジュリの足にツタが絡みつき、締め上げる。

ツタで足がほぼ覆われた始めたとき、突然ジュリはツタを薙ぎ払うのをやめる。そして、チェーンソーの回転する鋭い刃を自身の首元へと向ける。



「……はぁ、”死ぬほど”痛そう」



 チェーンソーの刃が、主であるジュリの首筋を薙ぎ払ったのだった。

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