第115話14-7
地面や木々に滴っている闇夜に紛れてしまいそうな、深い緑色の血を追う正造。
正造は”ワザと”逃がした化け物の痕跡を、猟犬のように追いかける。
「えっと、雪江さん。聞きたいことがあるんですけど」
「何かしら~、ジュリちゃん?」
血の跡を追う正造を追いかけながら、ジュリは自身の後を歩く雪江に話しかける。
雪江はバレットM82A1をまるで日傘のように肩に掛けながら、おっとりとした調子で答える。
「人間をあんな風に使う”化け物”なんて他にもいるの?」
「そうね~。あまり多くはないけれど時々見るわね~。 ……あそこまで酷い罠なんてないけど、ね」
「そう、ですか……」
一瞬だけ悲しそうな表情を見せた雪江はジュリとジョンの背中をぽんと押す。
雪江は2人を優しく押すと、正造の後を付いていくように促した。そうして、無言となった4人は、静かに血の跡を追うのだった。
「……あの廃ホテルだな」
正造がピタリと足を止める。
そこは雑草が胸の辺りまで群生していたが樹木は一本もなく、開けた場所であった。その場所の中心に4階建てのツタが生い茂り、長い年月人の手が入っていないであろうことがうかがい知れる廃ホテルが姿を現したのであった。
「血の跡はホテルの入り口に続いていやがるな」
胸まである雑草群の一部が不自然になぎ倒されており、道のように入り口へと続いていた。そして緑の血も、間隔は段々と長くなっていたがその道に点々と繋がっていた。
正造はゆっくりと警戒しながらも、血の跡を追ってホテルのエントランスへと侵入する。
「臭いな、ここ」
一歩エントランスに入った正造はしかめ面になりながらも、辺りを見渡す。
木製のフロントは黒いカビと砂埃によって汚され、さらには不届き者の侵入者がイタズラでもしたのか所々に穴が空いていた。また足下のコンクリートの床はひび割れ、所々に雑草が生えていた。さらには、ひしゃげた缶や割れた瓶の欠片が床に散らばり、何人もの人間がここに侵入していたことがうかがい知れた。
「さて、血の跡はあそこに続いて……」
正造はピタリと口を閉じる。そして、ハチェットを構えると後ろに着いてきた3人に向かって口パクで合図を送る。
『あ・そ・こ・か・ら・け・は・い・が・す・る』
正造が指さす先、それはフロント脇にある扉。そこには、朽ちかけていたが小さくプレートに『従業員専用』と書かれていた。
正造は後ろを振り向いて合図を送ると、その扉を蹴破るのであった。
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