第65話 10-8
ジュリとジョンにゆっくりと近づいてくる、”祝福された仔ら”の形に顔が裂けた男。
男が歩く度に、堅い木製の床を男の革靴がひどくきしみ音を立てる。
ジュリとジョンは男が自分たちに迫っているのを見ながら、男の異様な雰囲気により動けないで居た。
「……」
男はその粘着質な目を2人、特にジュリに向けながら、靴音を立てて歩く。そして、男はジュリの前に立つと、まるで値踏みをするように見つめる。
「……」
男は値踏みを止めると、男はジュリの耳元へ顔を近づけると、ジョンには聞こえない小声で囁く。
「実りと、収穫」
「……えっ?」
ジュリは一瞬、男の意味の分からない言葉に混乱する。
そしてジュリがその混乱に満ちた視線を男に向けた瞬間、男の白く枯れ木の様な手が、ジュリの首を締め上げ、ジュリの体を持ち上げる。
「ぐっ……!」
ジュリの体が持ち上がり、その男の手から逃れようとジュリはもがき、足が宙を蹴る。
しかし、いくらもがいても、ジュリは男の手から逃れることが出来なかった。
「かっ……はっ……」
ジュリは苦悶の声を上げて、必死に抵抗をしながらも、兄に視線を送る。
その視線に反応して、ジョンはまるで石のように動かなかった体を動かして散弾銃を男に向けて構える。
「ジュリから手を離せ、くそったれ!」
ジョンの手に持つ散弾銃が火を幾度も吹く。同時に重い音が、屋敷を駆け巡った。
その散弾銃から噴き出された弾丸は、男の顔に当たり、いくつもの穴がその顔に穿たれた。しかし。
「チィッ!」
ジョンは目の前の男の様子を見て、舌打ちをする。目の前の男の顔には、いくつもの黒い穴が開いてはいたが、そこからは血の一滴でさえ流れてはいなかった。
そしてその穴はジョンが見ている前で、その穴がゆっくりと小さくなりついには見えなくなる。
ジョンは手早く散弾銃をリロードをして何度も男を撃つが、結果は同じであった。そしてジョンの目の前でジュリの動きが段々と弱っていくのが、
その様子を見ながら男はジョンに顔を向けると、せせら笑うように口元を歪ませる。
「このヤロウッ!」
ジョンは散弾銃を捨てて、胸からサバイバルナイフを抜いて男に斬りかかる。ジョンのそのナイフは、男ののど笛に突き刺さり、首を一撃で切り落とすほどの攻撃であるはずであった。
だが、ジョンのナイフは男の薄皮1枚を剥ぐことさえ出来なかった。ジョンがその切っ先を驚愕の表情で見つめた瞬間、黒目しかない男の視線とジョンの視線がぶつかる。
「……お前は、不要だ」
男の手が握り拳を作り、ジョンの顔へと向かう。
そして男の拳が、ジョンの頬を貫く。ジョンはまるで空き缶のよう吹き飛び、口から鮮血と砕けた奥歯を吐き出しながら床を転がったのであった。
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